(注3)食品流通で使用されるプラスチック製の輸送用容器。
		 
		(3)畜産プロセスセンター
		 全体物流体制の中で基幹センターとして位置付けられているのが生鮮センターである(写真13)。
		 生鮮センターには畜産・水産・惣菜のPC機能とチルド・生鮮原材料のTC機能がある。今回は畜産事業者との関係の深い畜産PCについて述べてみる。
		
		(ア)畜産産地開発のいきさつ
		 オギノは、全店舗で前述の十和田湖高原ポーク「桃豚」を取り扱っている。「桃豚」を導入したのは、全国の銘柄肉を検討する中、食の安全への取り組みとしてのSPF技術での徹底した防疫体制の確立と、「BMW」(B=バクテリア、M=ミネラル、W=ウォーターの略で土の中のバクテリアと石に含まれるミネラルを利用して汚水を浄化する技術)の活用により抗生物質をほとんど使わずに生産される点に注目したためである。
		 小売業として安全・安心かつ美味しい豚肉を消費者に提供すべく、オギノとして銘柄豚「桃豚」を選択し、導入することになった。
		 併せて冒頭で述べたように養豚事業を中心とした循環型農業サイクルで生産された畜産物を扱うことで、社会貢献にもつながると考えた。
		 
		(イ)畜産産地から直結した畜産PC
		 産地のSPF工場と同様に、食品加工工場の衛生管理に実績のあるエンジ二アリング会社、三菱ケミカルエンジ二アリング株式会社の設計管理により、温度管理・鮮度管理を徹底した食品加工工場になっている(写真14〜16)。
		 産地の畜産加工工場⇒オギノの畜産PC⇒配送体制⇒店舗までが完全につながり、産地から店舗オープンケースまですべての過程においてコールドチェーンが確立されている。
		 工場内はソックダクト(注4)により低温管理されている。
		 
		(注4)特殊な布の筒に空調機で冷やされた空気を入れ、無風状態で霜が降るように部屋全体を均一に冷やす装置。鮮度管理・温度管理・働く環境づくりに効果がある。
		 
		畜産PCの作業工程
		1)原料入荷
		2)一次加工(磨き・成形)
		3)最終加工(切り身加工・スライス)
		4)盛付
		5)包装・値付け・仕分け
		6)配送
		7)店舗着(陳列)
		
		(ウ)畜産産地と小売業の取り組み
		1)産地としての原料のスペック(仕様)強化
		 産地における原料加工範囲やオギノのセンターにおける加工範囲を見直し、スペック(脂肪の厚さ、筋の取り方、サイズ、包丁加工カット数、加工範囲など)を取り決めた。センター入荷後、一次加工作業工程を少なくし、すぐに自動加工機器投入でスライス加工できるような態勢にした結果、鮮度向上・加工作業の生産性が大きく向上した。
		 産地から消費者の畜産物消費までの畜産流通ルート全体の中で、どの工程で、どの作業をすることが、全体として効率的かつ生産性を上げることにつながるかという視点で、工程全体を考え、見直すことが重要である。
		 
		2)年間取扱量にて計画生産
		 原材料の年間使用量を計画予測し、取り決めることにより産地としては計画的な生産準備作業が可能になる。小売業も安定した品質の原材料として継続的に安定供給を受けられることになり、より効率的なセンター作業が運営できる。年間を通して商品安定供給につなげている。
		 
		3)「桃豚」1頭単位のセット仕入れ方式
		 豚肉の部位は、肩ロース・ロース・バラ・もも・ひれなどのパーツで構成される。それをパーツ単品購入ではなく、1頭単位のセット買いで、年間仕入れ頭数を計画取引することにより、商品安定供給につなげている。
		 
		4)銘柄豚として売り場展開
		 店舗の売り場の「桃豚」コーナーを展開し、チラシによる販売促進、キッチンスタジオでの調理法の提案などにより、他小売業との差別化を図り、銘柄豚「美味しい桃豚」の特徴を消費者に紹介している(写真17)。
			 
		
		5)産地との交流
		定期的に、オギノの各部(商品部・販売部・物流部)が合同で、産地農場・工場を訪問し、産地とコミュニケーションを図ることにより、さらなる改善に取り組んでいる。
		 
		(エ)畜産PC運営の工夫
		その他の畜産PC運営の工夫として、以下の取り組みなどを行っている。
		・加工機器の自動機械化でさらなる効率改善、進化
		・店舗からのパック数発注を自動発注システムで精度アップさせ、店舗の品切れや値下げを抑制
		・受注パック数に応じたセンター作業の稼働計画を作成し、精度アップにより生産性向上、効率化
		・各店舗でのパック発注数から所要量展開機能(注5)で原料換算し、産地に週単位で原料調達の予約を入れ、計画的に仕入れを行う
		 
		(注5)必要な原材料の量を計算する機能。
		 
		 センターを単なる施設・箱でなく、企業全体を支える屋台骨として根幹をなす「事業」として、成長を継続させる必要がある。以下の課題について月次報告で実態を可視化させ、全社・全部門で情報を共有し、取組課題一覧表にて時系列で進捗状況を確認し、PDCAを実践し、縦割り組織に横串を刺し、組織横断的に会社全部門で取り組むことが重要である。
		 
		各種KPI(Key Performance Indicator、重要業績評価指標)数値を管理
		・人時生産性(一人一時間当たりの生産数日別、ライン別、畜種別)
		・センターパック当たりのコスト分析
		・人件費比率、人員構成、スキルマップ、多能工化
		・クレーム分析、対策、改善
		・作業改善、品質管理(QC)活動
		・歩留り改善、カッティングテスト
		・店舗の欠品分析、対策
		・センターマーチャンダイジング、供給比率、店舗マンアワー
		・店舗段階の生産性(人時売上げ・粗利・純利益・人件費一万円当たり各生産性)
		・店舗段階でのパック当たりコスト分析