私が牛の魅力に惹かれたのは、今からちょうど30年前。大阪府立農芸高等学校の資源動物科に進学したことがきっかけでした。動物が好きで、小学校の卒業アルバムに「将来の夢は獣医さん」と書くような子ども時代を送る中で、家の近くにあった “動物がたくさんいる” 農業高校に憧れ、1994年に入学することとなります。初めに牛や豚、ヤギ、ヒツジなど、校内で飼養されている一通りの動物の世話を体験しましたが、なぜだか牛に惹かれ、3年間を牛の世話にささげました。
卒業後は大阪府の酪農ヘルパーとなり、その間に家畜人工授精師の資格を取るなど、酪農の技術を学ばせていただき、牛への理解を深めていきました。同時に酪農家の皆さんのおおらかさや温かさ、牛へと向き合う真剣なまなざしを感じ、牛だけではなく、酪農という世界が、私にとってなくてはならない存在となりました。
しかしながら、腰を悪くして酪農ヘルパーを離職することとなります。望まない形で酪農から離れ、私は肩を落としました。
そんな時に私にもう一度牛とつながるチャンスをくれたのは、別の農業高校で同じく3年間牛の世話をしてきた友人の「牛の写真集があったらいいのに‥」という一言でした。その言葉をきっかけに作品として牛を撮るようになり、2009年に牛の写真集「うしのひとりごと」(河出書房新社)を出版し、そこから少しずつ牛写真家としてお仕事をいただけるようになりました。