牛飼養頭数は維持または減少、牛肉輸出量は増加の見込み
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は2024年2月末、最新の牛肉生産量などの見通しとなる「Industry projections 2024」を公表した(表1)。MLAは将来の気象変動、金利、為替、生産コスト、国内外のインフレ率などに関するさまざまな仮定を基に、本見通しを作成している。
これによると、23年の牛飼養頭数は過去最大規模の2870万頭に達した。しかし、24年は2859万頭(前年比0.4%減)とわずかな減少が予測されており、その後も減少傾向を維持し、26年には2675万頭(23年比6.8%減)とされている。これに関してMLAは、豪州南部は牛群再構築後の安定的な出荷から、牛群の規模縮小が見込まれるとしている。一方、北部は今後一定の降雨が予想されることから、牛群の規模は維持されるとしている。また、1頭当たり枝肉重量は、成牛の出荷が早まることで減少するものの、遺伝的選抜の取り組みなどにより高い水準を維持するとしている。これにより牛肉生産量は23年の221万1000トンから24年は245万トン、26年には255万8000トンまで増加し、牛肉輸出量も連動して23年の108万2000トンから24年は122万2000トン、26年には129万5000トンと増加を予測している。
24年3月の肉牛価格、需給緩和で下落傾向
肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2024年3月に入りおおむね下落傾向で推移しており、直近3月27日は1キログラム当たり597豪セント(601円:1豪ドル=100.61円(注))となった(図1)。MLAによると、家畜市場への牛の出荷頭数が増加している中で、最近の降雨量の減少から、牧草肥育農家からの需要が鈍化している影響とされている。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年3月末TTS相場。
24年3月第4週の成牛と畜頭数、13万頭を超える高水準で推移
週間成牛と畜頭数は、牛の出荷頭数増や食肉処理施設における稼働率上昇などを背景に、2024年3月に入り13万頭を超える水準で推移し、同月第4週の成牛と畜頭数は、13万6503頭(前年同月同週比19.7%増)となった(図2)。これは、先の干ばつによる牛群淘汰でと畜頭数が特に多かった20年5月以来の高水準となる。
24年2月の牛肉輸出量、日本向けが1年ぶりに最大輸出先に
成牛と畜頭数の増加を背景に、牛肉輸出量も堅調に増加している。豪州農林水産省(DAFF)によると、2024年2月の牛肉輸出量は9万3834トン(前年同月比33.3%増)と大幅に増加した(表2)。
米国内の牛肉生産量の減少を背景に、最近は米国向けが最大の輸出先となっていたが、24年2月は日本向けが2万3794トン(同42.8%増)と大幅に増加し、1年ぶりに最大の輸出先となった。この要因としてMLAは、日本の食肉在庫量が同年1月時点で同13.8%減少したことを挙げているが、これはインバウンド需要の増加などによる消費の促進が背景にある。
(調査情報部 国際調査グループ)