23年12月の豚肉生産量、前年同月比6.0%減
欧州委員会によると、2023年12月の豚肉生産量(EU27カ国)は、170万トン(前年同月比6.0%減)とかなりの程度減少した(図1)。同月の1頭当たり枝肉重量は93.7キログラム(同0.6%減)とわずかに減少したが、と畜頭数が1812万頭(同9.5%減)とかなりの程度減少したことが影響した。また、23年累計(1〜12月)の豚肉生産量も2060万トン(前年比6.7%減)と過去10年で最低となった。これは、環境やアニマルウェルフェアに関する厳しい規制、EU域内での継続的なアフリカ豚熱(ASF)の発生、輸出需要の減退によるものである。
一方、米国農務省海外農業局(USDA/FAS)の分析によると、24年の豚肉生産量は前年比で2.1%増加すると予測されている。これは、(1)23年12月の母豚頭数が前年同月比17万8000頭増になったこと(2)記録的な子豚価格と枝肉価格の上昇に加えて、飼料価格の下落から養豚生産者の収益性が改善されるため、豚飼養頭数の増加が見込まれること―によるものである。
23年の生産量を主要生産国別に見ると、すべての主要生産国で前年比減となった(表1)。しかし、ASFの発生から回復基調にあるポーランド(前年比1.7%減)やイタリア(同2.7%減)では母豚数が増加するなど、特に下半期(7〜12月)は前年同期比増に転じている。一方、生産量に対して輸出の割合が高いデンマークでは、国内と畜場の閉鎖や再編などによる生産能力の減少や輸出需要の減少の影響を受け、大幅な減産(同19.9%減)となった。
24年2月の豚枝肉卸売価格、前年同月比安も高値を維持
欧州委員会によると、2024年2月の豚枝肉卸売価格(EU27カ国)は、前年同月比4.6%安の100キログラム当たり207.52ユーロ(3万4187円:1ユーロ=164.74円(注))となり、21年11月以来2年3カ月ぶりに前年同月を下回った(図2)。ただし、域内の豚肉生産量の減少により供給量が限られる中で、夏場の需要に向けた豚肉在庫の積み増しを図る動きから、同価格は前月比で1.1%上回った。週別の価格動向を見ると、12月から翌1月にかけて下落したものの、2月からは7週連続で上昇しており、直近3月18日の週は前週から0.66ユーロ(108.73円)高の同218.13ユーロ(3万5935円)となった。現地報道によると、同価格は上昇基調が見込まれるものの、豚肉生産量の回復につれて市況は落ち着くとされている。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年3月末TTS相場。
23年の豚肉輸出量、大幅に減少
欧州委員会によると、2023年のEU域外への豚肉輸出量(EU27カ国)は、210万2797トン(前年比28.0%減)と大幅に減少した(表2)。域内生産量の減少による価格の上昇によりEU産豚肉の価格競争力が低下したことやASF発生による輸出停滞、アジア諸国を中心とした需要減などにより輸出量が減少した。
主要豚肉輸出先別に見ると、スペイン、デンマークともにASFの発生や生産コストの上昇により豚肉生産量が減少しているマレーシア向けが増加し、デンマークは、豚肉生産量の減少が続く英国向けが増加したものの、両国とも豚肉輸出量は大幅に減少した。
USDA/FASの分析によると、24年のEUの豚肉輸出量は、域内の豚肉生産量の増加見込みから、わずかな増加と予測されている。
(調査情報部 藤岡 洋太)