畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 堅調な需要により2023年の冷凍鶏肉輸出量は前年を上回る

海外需給【鶏肉/タイ】畜産の情報 2024年5月号

堅調な需要により2023年の冷凍鶏肉輸出量は前年を上回る

印刷ページ
23年の鶏肉生産量は前年比1.0%増
 タイ農業協同組合省農業経済局によると、2023年の鶏肉生産量は266万7491トン(前年比1.0%増)と前年をわずかに上回った。また、24年1月は20万5038トン(前年同月比0.2%増)と前年並みの開始になった(図1)。現地関係者によると、タイ国内の鶏肉需給はおおむね安定し、輸出需要が堅調にある中で、生産費高騰を背景とした大手生産者による減産が23年12月ごろに落ち着いたことが要因とされている。



 
 24年2月の鶏肉卸売価格は高値で推移した前年を下回る
 2024年2月の鶏肉卸売価格は、前年同月比1.9%安の1キログラム当たり55.8バーツ(237円:1バーツ=4.24円(注))となった(図2)。現地関係者によると、同月の鶏肉卸売価格は生産費高騰から高値で推移した前年水準を下回っているものの、アジア地域を中心とした堅調な輸出需要にけん引され、3月は上昇に転じるとみられている。ただし、主要輸出先であるアジア向け、欧州向けともに輸出先からの値下げ要請が強く、生産費の高止まりに加えて特に欧州向けは輸送費の上昇も影響する中で、今後の価格交渉は一段と難しい状況になりつつあるとされている。タイ荷主協議会によると、スエズ運河を利用する紅海での船舶攻撃への影響から、多くの船舶がアフリカの喜望峰を迂回うかいする航路に変更したことで、欧州向けの海上輸送コストが大幅に上昇しているとされている。
 
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年3月末TTS相場。


 
 
23年の冷凍鶏肉輸出量は前年を大幅に上回る
 2023年の冷凍鶏肉輸出量は、47万1610トン(前年比35.1%増)と前年から大幅に増加した(表1)。
 現地関係者によると、高病原性鳥インフルエンザが確認された中国や関税引き下げを行っている韓国向けの伸びに加え、インフレ対策として23年10月まで鶏肉の価格統制を実施していたマレーシア向けも堅調であったとされている。また、動物性タンパク質の中で比較的手頃な鶏肉の需要は安定しており、価格交渉などの課題を抱えつつも、国内企業の中には2カ月先の生産分まで販売先が決まっている企業もあるとされている。



 
23年の鶏肉調製品の輸出量は前年を下回る
 2023年の鶏肉調製品輸出量は、59万5651トン(前年比8.6%減)と前年をかなりの程度下回った(表2)。このうち、日本向けは28万5981トン(同7.9%減)と前年をかなりの程度下回り、欧州(英国およびオランダ)向けも前年を下回っている。現地関係者によると、日本向け鶏肉調製品の需要は回復傾向にあるとみているものの、現地企業では続騰する製造コストの圧縮策として、タイ国内での加工処理を回避する動きが見られ、鶏肉調製品から冷凍鶏肉での輸出にシフトする傾向にあるとしている。



 
 
(調査情報部 海老沼 一出)