24年1月の生乳出荷量、前年同月をわずかに下回る
欧州委員会によると、2024年1月の生乳出荷量(EU27カ国)は、1171万2000トン(前年同月比0.7%減)と前年同月をわずかに下回った(図1、表1)。主要生産国別に見ると、ポーランド(同2.8%増)、イタリア(同2.0%増)、スペイン(同1.2%増)、ベルギー(同1.9%増)およびオーストリア(同2.6%増)は前年同月を上回った。フランス(同0.3%減)は前年同月並みとなった一方、ドイツ(同2.0%減)およびオランダ(同3.0%減)は前年同月を下回り、アイルランド(同22.4%減)は前年同月を大幅に下回った。季節生産型の同国では、通常、冬場である1月の生乳生産量は少ないが、生乳取引価格を上回る生産コストや硝酸塩に係る規制(注1)などが生乳生産量の減少につながったとみられる。
(注1)アイルランドでは、硝酸塩指令による家畜排せつ物由来の窒素施用量の上限が従来の1ヘクタール当たり年間250キログラムから、一部地域で2024年1月に同220キログラムに引き下げられた。
24年2月の生乳取引価格、5カ月ぶりに前月を下回る
欧州委員会によると、2024年2月の生乳取引価格(EU27カ国の平均)は、100キログラム当たり46.34ユーロ(7634円:1ユーロ=164.74円(注2)、前年同月比13.1%安)と前年同月をかなり大きく下回った(図2)。また、前月比では0.9%安となり、5カ月ぶりに前月を下回った。
現地報道によると、2月以降はイースター前の生乳需要が高まる時期であることや、近年頻発している干ばつによる生乳減産の可能性から、生乳取引価格の下降は継続しないとみられている。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年3月末TTS相場。
23年末の乳用経産牛飼養頭数、8年連続で前年比減
欧州委員会によると、2023年12月時点の乳用経産牛飼養頭数(EU27カ国)は、1973万5350頭(前年比1.7%減)と8年連続で前年を下回り、統計開始以来、初めて2000万頭を割り込んだ(表2)。主要生産国別に見ると、ポーランドとアイルランドを除いて軒並み前年を下回り、多くの国では22年に比べて減少率が拡大した。ポーランドは、飼養頭数が前年をわずかに上回り(同1.5%増)、1頭当たりの乳量(注3)が6294キログラム(同0.3%増)と前年並みを維持したことから生乳出荷量を伸ばした。また、ドイツおよびオランダは、飼養頭数が減少する中で、1頭当たりの乳量が増加(ドイツは8733キログラム(同4.1%増)、オランダは8987キログラム(同2.5%増))したことから、生乳出荷量を維持している。
(注3)生乳出荷量を飼養頭数で除して求めたもの。
(調査情報部 渡辺 淳一)