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海外需給【牛乳・乳製品/中国】畜産の情報 2024年5月号

生乳価格はさらに下落、乳製品輸入量も引き続き低迷

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24年3月の生乳価格は前年同月比11.1%安
 中国農業農村部によると、2024年3月の生乳価格は1キログラム当たり3.55元(75.01円:1元=21.13円(注1)、前年同月比11.1%安)と前年同月をかなり大きく下回った(図1)。
生乳価格は23年1月以降、ほぼ一貫して下落基調にあり、3月の価格は、過去4年で最も安かった20年5月の同3.57元(75.43円)を下回った。
 中国農業農村部が24年2月に公表した「農産物需給動向分析月報(2024年1月)」の中で、今後の生乳価格の見通しが示されている。これによると、国内の乳製品需要はやや回復傾向にあるものの、生乳生産量の増加(注2)から需給は緩和しつつあり、乳製品在庫が積み上がる中で乳業からの引き合いが弱く、今後も低迷するとされている。
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年3月末TTS相場。
(注2)『畜産の情報』2024年3月号「23年の生乳生産量は過去最高、乳製品輸入量は大幅減少」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_003129.html)をご参照ください。



 
 
24年の乳製品輸入量は引き続き低水準
 2024年1〜2月期の乳製品主要8品目の輸入量は、8品目中5品目で前年を大幅に下回った(表、図2)。一方、全粉乳は11.0万トン(前年同期比15.4%増)と前年同期をかなり大きく上回った。この要因について現地専門家からは、全粉乳の国内在庫は積み上がっているものの、23年末からGDT(注3)価格が上昇傾向にあり(注4)、今後の価格上昇も見込まれたことで、乳業各社が春節前に原料の積み増しを行ったのではないかとの意見が聞かれた。
 中国国内の乳製品需給が緩む中、豪州農業資源経済科学局(ABARES)は、24年3月に公表した「豪州農畜産業の2029年までの中期見通し」において、世界の乳製品需要は中国の輸入需要の増加にけん引され、中期的に増加すると予測している。この理由についてABARESは、(1)所得の向上などから中国の乳製品需要がさらに高まり、同国の生乳生産量の増加を上回るペースで乳製品消費が増加すること(2)中国国内の低い生乳価格と高い生産コストにより、生産拡大に対する酪農家の投資意欲が低下し、生乳生産量の伸びが鈍化することを挙げている。
 
(注3)グローバルデイリートレード。月2回開催される電子オークションで、当該価格は乳製品の国際価格の指標とされている。
(注4)『畜産の情報』2024年2月号「GDT価格が続伸、23/24年度生産者支払乳価は引き上げ」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_003089.html)をご参照ください。





 
 
 
(調査情報部 平山 宗幸)