(1)肉用牛・牛肉の需給見通し
ア 飼養頭数は引き続き減少
2024年1月1日時点の牛総飼養頭数は、乳用種を含めて8716万頭(前年比1.9%減)とわずかに減少した(表3、図2)。内訳を見ると、経産牛は3758万頭(同2.0%減)で、うち肉用種は2822万頭(同2.5%減)と減少している。
さらに、23年の子牛出生頭数についても3359万頭(同2.5%減)と減少した。肉用繁殖用未経産牛頭数も486万頭(同1.4%減)、そのうち24年内分娩予定頭数も305万頭(同1.9%減)と減少しているため、24年の牛総飼養頭数は5年連続での減少見通しである。アウトルックに参加した業界関係者からも、「キャトルサイクルの縮小期が延びており、牛群の再構築は早くとも25年からになるだろう」との声が聞かれた。
同時点のフィードロット飼養頭数は1442万頭(同1.6%増)、フィードロット外の飼養頭数も2422万頭(同4.2%減)と減少した。24年の生体牛輸入頭数は205万頭(同3.5%増)と前年比増が見込まれるが、主要な生体牛輸入先であるメキシコとカナダ両国の国内需給がひっ迫していることから、輸入頭数は制限されるとみられている。
イ 牛肉生産量はやや減少
2023年の牛肉生産量は、と畜頭数の減少(前年比4.3%減)に加え、平均枝肉重量もわずかに減少(同0.4%減)したことから、1223万トン(同4.7%減)とやや減少した(図3)。24年は、牛群縮小の影響などにより1187万7000トン(同2.9%減)と引き続き減少する見通しである。
ウ 肥育牛価格、4年連続で上昇
2023年の主要5地域の肥育牛平均価格は、頭数の減少から1キログラム当たり3.87米ドル(円換算590円、前年比21.6%高)と大幅に上昇した(図4)。また、24年はさらに肥育牛飼養頭数の減少が予測されることから、肥育牛平均価格は同3.96米ドル(同604円、同2.5%高)と、23年の記録的価格を上回る見通しである。
エ 牛肉輸出量は引き続き減少
2023年の牛肉輸出量は137万8000トン(前年比14.3%減)とかなり大きく減少した(図5)。主要輸出先のうち、メキシコや香港向けの輸出量は増加したものの、日本、韓国、カナダ、台湾、中国向けの減少が全体の輸出量を押し下げた。米国産牛肉価格の高騰や、アジア向けなどで競合する豪州からの輸出量の増加に加え、複数の主要輸出先の景気低迷が影響したとみられる。
24年は126万3000トン(同8.3%減)とさらにかなりの程度減少する見通しである。米国内の牛肉需給のひっ迫やそれに伴う価格上昇による米国産牛肉の価格競争力の低下に加え、豪州やブラジルからの牛肉輸出量の増加が見込まれることなどが要因とみられる。
オ 牛肉輸入量はかなりの程度増加
2023年の牛肉輸入量は169万1000トン(前年比9.9%増)とかなりの程度増加した(図6)。ブラジル産牛肉の輸入が低関税枠の早期消化の影響を受けて減少したものの、豪州産やカナダ産牛肉の輸入量が増加したことから、全体として増加した。
24年は国内生産量が減少する中、187万1000トン(同10.7%増)とかなりの程度増加の見通しである。ブラジルは低関税枠の制約を受けるものの、米国の加工用牛肉需要が堅調なことや、豪州の牛肉生産量の増加などにより、豪州産牛肉の輸入量の増加が見込まれている。
(2)養豚・豚肉の需給見通し
ア 飼養頭数、わずかに増加
2023年12月1日時点の豚総飼養頭数は、7497万頭(前年比0.02%増)となった(図7)。母豚の頭数は減少したものの、一腹当たり平均産子数が増加したことにより総飼養頭数は前年並みとなった。24年は、上半期の分娩予定母豚が同1.5%減と見込まれており、一腹当たり平均産子数の増加を相殺するとみられる。
イ 豚肉生産量は2年連続で増加
2023年の一腹当たり平均産子数を見ると、第1四半期に減少したものの、それ以降は増加し、24年もこの傾向が続くとみられる(図8)。24年の豚肉生産量は、と畜頭数と枝肉重量の増加により1264万6000トン(前年比2.1%増)と増加の見通しである(図9)。
ウ 豚肉輸出量、やや増加
2023年の豚肉輸出量は、309万3000トン(前年比7.5%増)とかなりの程度増加した(図10)。主要輸出先であるメキシコ向け(同9.8%増)やカナダ向け(同8.3%増)輸出量の増加が要因とみられる。24年は、ブラジルとの競合が懸念されるものの、米国の豚肉生産量の増加に加え、欧州の生産量低下が見込まれることから、321万トン(同3.8%増)とやや増加の見通しである。
エ 豚肉輸入量、やや増加
2023年の豚肉輸入量は、米国内の豚肉生産量の増加により52万トン(前年比15.0%減)と前年からかなり大きく減少した(図11)。一方、24年は、堅調な豚肉需要からやや増加(同4.5%増)の見通しである。
オ 肥育豚価格はわずかに上昇
2023年の肥育豚平均価格は、国内需給の緩和により1キログラム当たり1.29米ドル(円換算197円、同17.7%安)と大幅に下落した(図12)。一方、24年は、国内生産量が増加する中で国内外需要の拡大が価格を下支えすることで、同1.32米ドル(同201円、同2.4%高)と見込まれている。
注目されるカリフォルニア州法第12号(注5)の影響に関し、アウトルックで講演が行われた。講演者は「州法の適用範囲は今のところ精肉などのカット肉のみを対象としているが、それでも生産の約半分を占め、生産コストの上昇に伴い、州内の豚肉小売価格を7〜10%押し上げる可能性がある」との予測を示した。
(3)肉用鶏・鶏肉の需給見通し
ア 鶏肉生産量、わずかに増加
2023年の鶏肉生産量は、肉用種鶏卵の孵化率が低調であったものの、生体重量の増加から2103万9000トン(前年比0.4%増)とわずかに増加した(図13)。24年は好調な鶏肉需要が価格を下支えするとともに、飼料コストの上昇が緩やかになると見込まれることで、鶏肉生産量は2121万7000トン(同0.8%増)とわずかに増加の見通しである。
イ 鶏肉輸出量、わずかに減少
2023年の鶏肉輸出量は、329万5000トン(同0.3%減)と前年並みとなった(図14)。24年は国内生産量が増加するものの、鶏肉輸出量は327万3000トン(同0.7%減)とわずかに減少する見通しである。旺盛な国内需要に加え、価格上昇に伴う輸出競争力の低下や、最大のブロイラー肉輸出国であるブラジルの生産量の増加などが要因とされる。
ウ 丸どり卸売価格は上昇
2023年の丸どり卸売価格は、需給の緩和により1キログラム当たり2.74米ドル(円換算418円、前年比11.5%安)とかなり大きく下落した(図15)。24年は国内供給量がやや増加するものの、牛肉生産量の減少に伴う価格の高騰から鶏肉需要の増加が見込まれるとして、同2.80米ドル(同427円、同2.1%高)とわずかに上昇する見通しである。
(4)採卵鶏・鶏卵の需給見通し
ア 鶏卵生産量は増加
2023年の総鶏卵生産量は、同年11〜12月に発生したHPAIの影響などにより、91億3000万ダース(前年比0.01%増)と前年並みで推移した(図16)。24年は1羽当たり産卵数の増加が見込まれるものの、産卵鶏の置き換えが進むことから93億1000万ダース(同2.0%増)とわずかな増加にとどまる見通しである。
イ 鶏卵価格は下落
2023年の食用鶏卵の価格は、第1四半期はHPAIに伴う供給不足により1ダース当たりの鶏卵卸売価格が3.2米ドル(488円)と前年同期比で高騰したものの、第2、第3四半期には1.4米ドル(213円)、第4四半期には1.8米ドル(274円)と比較的堅調に推移した。24年は国内生産量が小幅な伸びにとどまり、需要も比較的旺盛であることから、第2四半期以降については前年並みの価格見通しである。
ウ 鶏卵・鶏卵製品輸出量は減少
2023年の鶏卵・鶏卵製品輸出量は、22年の非常に落ち込んだ水準から殻付き換算で2億5000万ダース(前年比10.6%増)とかなりの程度増加した(図18)。24年は、国内生産量の増加と価格の低下にもかかわらず、輸出需要の低迷により2億4100万ダース(同3.8%減)と減少の見通しである。
(5)酪農・乳業の需給見通し
ア 乳用経産牛頭数は減少
2024年1月1日時点の乳用経産牛飼養頭数は、935万7000頭(前年比0.4%減)とわずかに減少した(図19)。これは、23年の酪農マージンの低迷や、肉牛価格の高騰に伴う乳用経産牛の出荷増が要因とみられる。24年の年平均経産牛頭数は23年を下回ると想定されるが、年初の水準を維持し、わずかな減少にとどまる見通しである。
イ 生乳生産量、わずかに増加
2023年の経産牛頭数は減少したものの、1頭当たり年間乳量は1万939キログラム(前年比0.1%増)になったことから(図20)、生乳生産量は1億267万トン(同0.04%減)と前年並みで推移した(図21)。24年についても1頭当たり乳量の増加(同1.2%増)が見込まれることから、生乳生産量は1億351万トン(同0.8%増)とわずかに増加する見通しである。
ウ 乳価はわずかに上昇
2023年の全米平均総合乳価は、生乳生産量の増加や軟調な乳製品需要から需給が緩和したことで、1キログラム当たり0.45米ドル(円換算69円、前年比19.9%安)と前年を大幅に下回った(図22)。24年は生乳生産量の増加が見込まれるものの、国内外の旺盛な乳製品需要が価格を下支えし、同0.46米ドル(同70円、同2.3%高)と前年をわずかに上回る見通しである。
エ 乳製品輸出量は増加
2023年の乳製品輸出量は、主要輸出先の需要減などにより乳脂肪分ベースで480万4000トン(前年比20.7%減)、無脂乳固形分ベースで2265万1000トン(同5.6%減)といずれも減少した(図23)。
24年は、生乳生産量の増加が見込まれることに加え、EUやニュージーランドなどの輸出競合国の乳製品需給がひっ迫していることなどから、バター、チーズ、乳糖、脱脂粉乳など輸出量の増加が見込まれる。乳脂肪分ベースの輸出量は530万トン(同10.5%増)、無脂乳固形分ベースでは2354万トン(同3.9%増)と増加する見通しである。