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海外需給【牛肉/EU】畜産の情報 2024年6月号

牛肉生産量の減少は24年も継続の見込み

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23年の牛肉生産量、前年比4.0%減
 欧州委員会によると、2023年の牛肉生産量(EU27カ国)は637万5600トン(前年比4.0%減)とやや減少した(図1、表1)。生産者の収益性の悪化や環境規制の強化、牛肉需要の低迷などにより近年は牛飼養頭数が減少傾向で推移しており、同年12月時点の牛飼養頭数(乳用牛を含む)は7383万4210頭(同1.3%減)となり7年連続で前年を下回った。加えて、23年は生産コストの高騰に伴う1頭当たりの枝肉重量の減少も、牛肉生産量の減少につながった。米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によると、24年のEUの牛飼養頭数は前年比0.3%の減少と見込まれるが、飼料価格の下落に伴う枝肉重量の増加が期待されることで、牛肉生産量の減少幅は緩やかになると予測されている。



 
 
24年3月の枝肉卸売価格、高値を維持
 2024年3月の牛枝肉平均卸売価格(注1)は、100キログラム当たり503.88ユーロ(8万5468円:1ユーロ=169.62円(注2)、前年同月比1.4%安)となった(図2)。現地報道によると、同価格は前年同月を下回ったものの、EU域内の牛肉供給量が減少していることで高値を維持しており、大幅な価格上昇は見込めないものの引き続き高値が続くとされている。欧州委員会によると、高値が続いていることに加えて飼料価格が下落したことから、生産者の収益性は改善傾向にあるとされている。欧州委員会が23年12月7日に公表した35年までの中期的見通しによると、牛肉生産量の減少から牛肉価格は高水準に落ち着くと予測されている。
 
(注1)若雄牛(A)、去勢牛(C)および若齢牛(Z)のうち枝肉の格付けが上(R)、枝肉の脂肪の付着度合が平均的(5段階中3)なものの平均価格(A/C/Z-R3)。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年4月末TTS相場。

 
23年の牛肉輸出量は増加、輸入量は減少
 2023年の冷蔵および冷凍牛肉輸出量は、42万8498トン(前年比3.0%増)とやや増加した(表2)。EU産牛肉価格の高止まりによる価格競争力の低下から、冷凍牛肉輸出量はかなり大きく減少(同14.8%減)した中で、22年にEU産牛肉の輸入を再開したトルコ向け(同約857倍増)を中心に冷蔵牛肉が大幅に増加(同16.1%増)したことが寄与した。
 一方、同年の牛肉輸入量は、主要輸入先である英国の牛肉供給量が減少傾向にあることや、域内の牛肉価格高騰による需要低下の影響により、25万947トン(同1.8%減)とわずかに減少した(表3)。
 USDA/FASは、牛肉生産量の減少と牛肉価格の高値による域内需要の減少が影響し、24年のEUの牛肉輸出量、輸入量はともにやや減少と予測している。



 
 
(調査情報部 藤岡 洋太)