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海外需給【牛肉/ブラジル】畜産の情報 2024年6月号

2023年の牛肉輸出量は前年をわずかに上回る

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23年の牛と畜頭数は繁殖雌牛を中心に増加し、13年以来の高水準
 ブラジル地理統計院(IBGE)が四半期ごとに公表すると畜統計によると、2023年の牛と畜頭数は3406万1000頭(前年比13.7%増)、牛肉生産量は895万3000トン(同11.7%増)といずれも前年をかなり大きく上回った(図1)。牛と畜頭数は、1997年にIBGEが統計を取り始めて以来最多となった13年(3441万2000頭)に次いで多く、また、牛肉生産量は、これまでの最大となった。これは、生体牛価格が下落傾向で推移する中、肉用牛生産者が繁殖雌牛を中心にと畜向け出荷を増加したことが要因である。牛と畜頭数は年末にかけて増加傾向で推移し、第4四半期(10〜12月)には915万3000頭(前年同期比21.3%増)と大幅に増加した。州別の年間と畜頭数を見ると、中西部マットグロッソ州(全体の17.4%)が最も多く、中西部ゴイアス州(同10.4%)、南東部サンパウロ州(同10.1%)の順となった。
 過去4年間の状況を見ると、20〜21年のと畜頭数は、19〜22年に子牛価格が上昇し、繁殖農家が増頭のため繁殖雌牛を保留したことから、いずれも前年を下回った。22年は、牛肉価格が高水準で推移したことから3年ぶりに増加した。

 
23年の牛肉輸出量は年初の落ち込みから持ち直し前年比0.7%増
 ブラジル開発商工サービス省貿易局(SECEX)によると、2023年の牛肉輸出量は、200万5879トン(前年比0.7%増)と前年をわずかに上回った(表)。牛肉輸出量は年初に大幅に落ち込んだが、その後持ち直した。一方、同年の輸出単価は1トン当たり4734米ドル(74万7499円:1米ドル=157.90円(注)、同20.2%安)と大幅に低下した。
 輸出先別に見ると、輸出量全体の6割を占める中国向けは119万6014トン(同3.4%減)と前年をやや下回った(図2)。これは、23年2月にブラジル北部パラー州で非定型BSEに感染した牛が確認され、同国向け輸出が1カ月間(2月23日〜3月22日)停止したことが影響している。また、同国向け輸出単価が中国経済の低迷などを背景に、同25.3%安と大幅に低下したことも影響したとみられる。一方、中国以外の主要輸出先であるチリ、米国、アラブ首長国連邦向けは増加した。
 ブラジルでは、中国への過度な輸出依存を回避するため、輸出先の多様化に向けた取り組みが進められており、24年はインドネシア、タイ、メキシコ向けなどの増加が見込まれている。24年1〜3月の牛肉輸出量は、52万7138トン(前年同期比28.3%増)と前年同期の落ち込みの反動から大幅に増加した。



 
 
24年肥育牛価格は前年に続き下落傾向で推移
 サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、2024年4月25日時点の肥育牛価格は1キログラム当たり15.54レアル(474円:1レアル=30.53円(注)、前年同日比17.2%安)となった(図3)。23年の肥育牛価格は、と畜頭数の増加による牛肉の供給過剰などから下落傾向で推移し、9月12日には同13.09レアル(400円、同35.9%安)と20年5月以来の安値となった。その後は、牛肉供給量の調整が進むとともに輸出が回復基調となったことから需給が好転し、肥育牛価格は一時上昇に転じたものの、24年は年初から再び下落傾向で推移している。
 
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年4月末のTTS相場および現地参考為替相場(Selling)。

 
(調査情報部 井田 俊二)