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海外需給【牛乳・乳製品/EU】畜産の情報 2024年6月号

24年2月の生乳出荷量、6カ月ぶりに前年同月を上回る

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24年2月の生乳出荷量、前年同月比3.2%増
 欧州委員会によると、2024年2月の生乳出荷量(EU27カ国)は、1152万トン(前年同月比3.2%増)と6カ月ぶりに前年同月をやや上回った(図1、表1)。主要生産国別に見ると、ポーランド(同7.4%増)、イタリア(同4.1%増)およびスペイン(同5.6%増)は前年同月を上回った。なお、フランス(同4.0%増)は15カ月ぶりに前年同月を上回った。現地報道によると、(1)乳価が比較的高いこと(2)前年に収穫された飼料が良質であること(3)前年に比べ気象条件が良好であること―が、生乳出荷量増加の要因としている。また、今年はうるう年のため、同月の日数が例年よりも1日多かったことも一因としている。一方で、アイルランドは12カ月連続で前年同月を下回ったが、これは天候不順や硝酸塩に係る規制(注1)などの影響とみられている。
 
(注1)アイルランドでは2024年1月から、一部地域を対象に硝酸塩指令による家畜排せつ物由来の窒素施用量の上限が従来の1ヘクタール当たり年間250キログラムから、同220キログラムに引き下げられた。



 
 
24年4月のバターおよびチーズ価格、上昇傾向を継続
 欧州委員会によると、2024年4月21日の週の乳製品価格(EU27カ国の平均)は、バターが100キログラム当たり574ユーロ(9万7362円:1ユーロ=169.62円(注2)、前年同期比22.1%高)、全粉乳が同364ユーロ(6万1742円、同8.1%高)、ホエイパウダーが同76ユーロ(1万2891円、同2.7%高)といずれも前年同期を上回った(図2)。一方、脱脂粉乳は同239ユーロ(4万539円、同0.9%安)、チーズは同392ユーロ(6万6491円、同5.4%安)と前年同期を下回った。
 チーズの価格は前年同期を下回ったものの上昇傾向にあり、国連食糧農業機関(FAO)によると、アジアからの安定した輸入需要に加え、春の休暇に向けて西ヨーロッパの域内需要の高まりや、オセアニアの季節的な生産量の減少によるものとしている。また、現地報道によると、EUの熟成系チーズの在庫が少なく生産が増える中で、バター向け生乳供給量が減少していることがバター価格を押し上げているとしている。
 
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年4月末TTS相場。

 
23年の主要乳製品輸出量、前年を上回る
 欧州委員会によると、2023年のEU域外向けの主要乳製品輸出量は、バターが25万4928トン(前年比14.1%増)、脱脂粉乳が77万8998トン(同10.2%増)、チーズが138万1323トン(同3.6%増)、全粉乳が26万2235トン(同12.1%増)といずれも前年を上回った(表2)。23年は前年に比べて乳製品価格が比較的安定し、輸出競争力が高まったことが寄与したとみられる。輸出先別の中では、中国向けはバター(同27.3%増)とチーズ(同15.5%増)が増加する一方、脱脂粉乳(同16.4%減)と全粉乳(同33.1%減)が減少している。しかし、これら粉乳はアフリカやサウジアラビアなど中東向けが増加したことで、EU全体としての輸出増につながっている。

 
(調査情報部 渡辺 淳一)