24年5月の肉牛価格、過去5カ年平均の約2割安の水準で推移
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、直近の2024年5月31日で1キログラム当たり597豪セント(633円:1豪ドル=106.01円(注))となった(図1)。同価格は、過去5カ年平均の約2割安の水準にあり、5月に入り小幅な値動きで推移している。現地報道によると、牛の家畜市場への出荷頭数は増加傾向とされるが、後述するように今後一定の降雨による牧草確保の可能性を考慮した一部の牧草肥育農家の需要増などにより、EYCI価格は比較的安定して推移している。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年5月末TTS相場。
成牛と畜頭数および牛肉生産量はわずかに減少
豪州統計局(ABS)が2024年5月に公表した統計によると、24年第1四半期(1〜3月)の牛のと畜頭数は181万頭(前期比2.0%減)、牛肉生産量は57万700トン(同1.4%減)といずれもわずかに減少した(図2)。他方で雌牛と畜割合(FSR)は、牛群の再構築と整理の判断基準の一つとされる47%を維持している(図3)。肉用牛繁殖農家は、今後の気象予報に注視しつつ、雌牛の保留または出荷の判断を留保しているとみられる。このような中で豪州気象局(BOM)は、24年6月から8月の降雨予想図を公表し、豪州の広範な地域で、平年か平年以上の降雨を予想している(図4)。また、BOMでは、24年後半には国内各地に雨をもたらすラニーニャ現象が再び発生する可能性があることを示唆している。
24年4月の牛肉輸出量、北米向けを中心に前年同月比46.2%増
豪州農林水産省(DAFF)によると、2024年4月の牛肉輸出量は、10万5367トン(前年同月比46.2%増)と大幅に増加した(表)。
輸出先別に見ると、引き続き米国向けが最も多く、2万7257トン(同117.2%増(約2.2倍))と大幅に増加した。次いで日本向けは2万1731トン(同42.7%増)と同じく大幅に増加しており、米国からの供給減が豪州産牛肉の日本への堅調な輸出を下支えしている。また、カナダ向けは米国同様、干ばつの影響により同国の牛肉生産量が減少していることから、2370トン(同397.4%増(約5.0倍))と大幅に増加している。
一方、中国向けは、景気後退による需要の落ち込みから1万4888トン(同11.1%減)となり、主要輸出先の中で唯一減少した。しかし、5月30日付けの現地報道によると、過去数年間にわたり中国が豪州の食肉加工施設に課していた輸入停止措置が解除(7カ所中5カ所)されたとしており、6月以降の中国向け牛肉輸出量の動向が注目される。
(調査情報部 国際調査グループ)