24年2月の豚肉生産量、前年同月比5.3%増
欧州委員会によると、2024年2月の豚肉生産量(EU27カ国)は、175万7000トン(前年同月比5.3%増)とやや増加した(図1)。EUの豚肉生産量は22年6月から23年12月まで19カ月連続で前年同月を下回っていたが、24年に入り2カ月連続で前年同月を上回った。同月のと畜頭数が1824万頭(同3.8%増)とやや増加したことが豚肉生産量増の要因となった。
欧州委員会が24年5月3日に公表した短期的見通しによると、23年12月時点の母豚や子豚の飼養頭数が前年同月比増となったことで、豚肉生産に回復の兆候がみられるとされる。米国農務省海外農業局(USDA/FAS)の分析によると、母豚などの増加に加えて飼料価格の下落により養豚生産者の収益性が改善されることから、飼養頭数が増加すると見込まれ、24年の豚肉生産量は2.1%増加すると予測されている。
24年1〜2月の豚肉生産量を主要生産国別に見ると、デンマークを除き前年同期比増となった(表1)。中でも、ASFの発生から回復基調にあるポーランド(前年同期比13.7%増)はかなり大きく増加した。また、現地報道によると、減少傾向で推移していたドイツの豚肉生産量は安定に転じてきた可能性が示唆されている。さらに、主要生産国の中で唯一、減少となったデンマークも、24年4月1日時点の豚飼養頭数が約3年ぶりに前年同月を上回った(前年同月比6.8%増)ことで、24年の豚肉生産量は前年をわずかに上回ると見込まれている。
24年4月の豚枝肉卸売価格、前年同月比8.1%安
欧州委員会によると、2024年4月の豚枝肉卸売価格(EU27カ国)は、前年同月比8.1%安の100キログラム当たり219.03ユーロ(3万7515円:1ユーロ=171.28円(注1))となった(図2)。前月からほぼ横ばいとなったが、北欧では冷涼な気候が続き、屋外調理需要の伸び悩みなどが前年を下回った要因とみられる。一方、韓国やフィリピン向けなど輸出が回復する中で、供給量は引き続き少ないことから、同価格は比較的高値で推移している。週別の価格動向を見ると、5月も横ばい傾向で推移しており、直近5月20日の週は前週から0.81ユーロ(139円)高の同220.68ユーロ(3万7798円)となった。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年5月末TTS相場。
24年3月の豚肉輸出量、大幅減もアジア向けは一部回復
欧州委員会によると、2024年3月のEU域外への豚肉輸出量(EU27カ国)は、域内生産量の減少による価格の上昇からEU産豚肉の価格競争力が低下したことで、16万9573トン(前年同月比20.3%減)と大幅に減少した(表2)。24年第1四半期(1〜3月)の豚肉輸出量は、豚肉需要が高まる韓国(注2)やフィリピン向けを中心に前年同期を上回ったが、その他の主要輸出先への輸出が減少したことにより、全体では、前年同期から大幅に減少した。
前述の短期的見通しによると、EUの豚肉価格が高止まりで推移した場合、24年の輸出量は前年比4%減少の可能性があると予測されている。
(調査情報部 藤岡 洋太)