23年の鶏肉生産量は前年比3.5%増、堅調な輸出需要などで5年連続増加
ブラジル地理統計院(IBGE)によると、2023年の鶏肉生産量は1332万1000トン(前年比3.5%増)と5年連続で増加し、IBGEが統計を取り始めた1997年以降最大となった(図1)。これは、堅調な輸出需要(同8.4%増)が後押ししていることに加え、23年当初からトウモロコシなど飼料価格が下落したことで、生産コストの低下による収益性の改善から生産者の増産意欲が強まったためである。また、同年の鶏処理羽数は、62億8218万羽(同2.8%増)となった。
24年の鶏肉生産量は、堅調な輸出需要、安定的な国内消費、生産コストの低下などから引き続き増加基調で推移するとみられている。
24年1〜4月の鶏肉輸出量、中国向けの減少から前年同期比2.8%減
ブラジル開発商工サービス省貿易局(SECEX)によると、2024年1〜4月の鶏肉輸出量は156万8271トン(前年同期比2.8%減)と前年同期をわずかに下回った(表)。
輸出先別に見ると、最大の中国向けは17万7089トン(同32.6%減)と高水準となった23年の反動で前年同期を大幅に下回った。ただし、同国向け輸出については、中国政府が24年2月、ブラジル産鶏肉に課していた反ダンピング課税を解除したほか、同年3月、新たにブラジルの八つの鶏肉処理施設に対する輸出許可を決定したことなどから、今後、増加に転じるとみられる。一方、アラブ首長国連邦(同26.0%増)やサウジアラビア(同17.2%増)などのハラール市場向けは、前年同期を大幅に上回った。また、日本向けは14万8731トン(同6.4%増)と前年同期をかなりの程度上回った。
24年の鶏肉卸売価格は比較的安定して推移
サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、直近(2024年5月23日時点)のブラジルの鶏肉卸売価格(サンパウロ州)は、1キログラム当たり7.29レアル(219円:1レアル=30.09円(注)、前年同期比11.3%高)となった(図2)。24年に入り鶏肉卸売価格は、ほぼ同7.0〜7.5レアル(211〜226円)の範囲で安定的に推移している。
23年の鶏肉卸売価格は、国内での記録的な鶏肉生産による鶏肉需給の緩和に加え、牛肉や豚肉との価格差の縮小による鶏肉の価格競争力低下から4〜7月にかけて急落し、同5.66レアル(170円)と高値時から3割程度下落した。その後は、鶏肉供給量の削減などにより需給が改善されたことで、価格は上昇に転じたが、年平均を比較すると高水準となった22年の価格から1割程度低下した。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年5月末のTTS相場および現地参考為替相場(Selling)。
リオグランデドスル州で大規模な洪水が発生、同国の鶏肉需給に影響も
南部リオグランデドスル州では、2024年4月末から5月にかけて大雨に伴う大規模な洪水が発生し、同州の社会経済に大きな被害をもたらした。同州は鶏肉生産が盛んで、中部を中心に鶏舎などの浸水や道路の寸断による生産資材の輸送などに影響が生じた。このほか、鶏肉処理施設が浸水し、生鳥の搬入や鶏肉輸送への影響なども報告されている。被害規模などの詳細はまだ明らかになっていないが、同国の鶏肉価格は洪水発生後も比較的安定して推移しているとされている。同州はブラジル第4位の鶏肉生産州で、23年は国内鶏肉生産量全体の10.6%を占めている。
(調査情報部 井田 俊二)