24年3月の生乳出荷量、前年同月比0.6%増
欧州委員会によると、2024年3月の生乳出荷量(EU27カ国)は、1292万3000トン(前年同月比0.6%増)と前年同月をわずかに上回った(図1、表)。主要生産国別に見ると、オランダ(同1.4%減)およびアイルランド(同5.9%減)を除き前年同月を上回った。減少となったアイルランドは、天候不順や硝酸塩に関する規制(注1)の影響から13カ月連続で前年同月を下回ったが、前月に比べて減少率は縮小している。他方で、出荷量の増加が続くポーランド(同4.3%増)は、良好な天候が牧草の生育など放牧環境に寄与したことで、30カ月連続で前年同月を上回った。
(注1)アイルランドでは2024年1月から、一部地域を対象に硝酸塩指令による家畜排せつ物由来の窒素施用量の上限が従来の1ヘクタール当たり年間250キログラムから、同220キログラムに引き下げられた。
24年4月の生乳取引価格、12カ月連続で前年同月を下回る
欧州委員会によると、2024年4月の生乳取引価格(EU27カ国の平均)は、100キログラム当たり46.31ユーロ(7932円:1ユーロ=171.28円(注2)、前年同月比2.5%安)と前年同月をわずかに下回った(図2)。しかし、直近の乳製品価格が比較的安定していることに連動し、前月比では0.2パーセント安にあり、4カ月連続で前月並みの水準を維持している。過去5年(19〜23年)の平均生乳取引価格と比べると、24年に入り各月とも15パーセント程度高い水準にある。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年5月末TTS相場。
24年5月のバター価格、上昇基調の中で前年同期比28.5%高
欧州委員会によると、2024年5月26日の週の乳製品価格(EU27カ国の平均)は、バターが100キログラム当たり609ユーロ(10万4310円、前年同期比28.5%高)、全粉乳が同373ユーロ(6万3887円、同6.9%高)、チーズは同390ユーロ(6万6799円、同8.4%高)、ホエイパウダーが同78ユーロ(1万3360円、同4.8%高)といずれも前年同期を上回った(図3)。一方、脱脂粉乳は同244ユーロ(4万1792円、同1.7%安)と前年同期をわずかに下回った。
バター価格上昇の背景として、EU域内外の好調なチーズ需要によりチーズの生産量が増える中で、生乳のバター仕向け量の減少によるバター生産量の減少がみられる中、米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)によると、イースターなど春の祝祭日や小売店の販促活動に加え、旬を迎えるアスパラガスのソースとしてバターの消費が増えることで、需給がひっ迫しているとみられる。現在のEU産バターの価格は、オセアニア産や上昇している米国産に比べてやや下回っているため、国際市場での価格競争力を維持しているとされる。今後、オセアニアからの供給が季節的に減少する時期に近づくにつれ、さらなる価格上昇の可能性も示唆されている。
(調査情報部 渡辺 淳一)