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海外需給【牛乳・乳製品/EU】畜産の情報 2024年8月号

24年6月のバター価格、22年後半以来の1トン当たり6000ユーロ超に

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24年4月の生乳出荷量、前年同月比1.1%増
 欧州委員会によると、2024年4月の生乳出荷量(EU27カ国)は、1289万7000トン(前年同月比1.1%増)と前年同月をわずかに上回った(図1、表1)。主要生産国別に見ると、オランダ(同1.3%減)およびアイルランド(同7.9%減)を除き、前年同月並みか前年同月を上回った。かなりの程度減少したアイルランドは、低温や曇天による牧草の生育不良などから牛の淘汰とうたが進んでいることや、硝酸塩に関する規制(注1)の影響から14カ月連続で前年同月を下回った。他方で、出荷量の増加が続くポーランド(同5.4%増)は、牛枝肉価格高騰の影響などから、前年に比べて乳牛のと畜向け出荷頭数が増加しているものの、良好な天候が牧草の生育など放牧環境に寄与したことで、31カ月連続で前年同月を上回った。
 
 
(注1)アイルランドでは2024年1月から、一部地域を対象に硝酸塩指令による家畜排せつ物由来の窒素施用量の上限が従来の1ヘクタール当たり年間250キログラムから、同220キログラムに引き下げられた。オランダでは現在同210〜230キログラムの上限が、今後26年までに他の加盟国と同じ同170キログラムに引き下げられる。
 




 
 
24年5月の生乳取引価格、13カ月ぶりに前年同月を上回る
 欧州委員会によると、2024年5月の生乳取引価格(EU27カ国の平均)は、100キログラム当たり46.22ユーロ(8034円:1ユーロ=173.83円(注2)、前年同月比1.6%高)と前年同月をわずかに上回った(図2)。直近の乳製品価格が比較的安定していることに連動し、前月比では0.3%高にあり、5カ月連続で前月並みの水準を維持している。過去5年(19〜23年)の各月の平均生乳取引価格と比べると、24年に入りいずれも15%程度高い水準にあり、生乳出荷量の維持に寄与している。
 
 
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年6月末TTS相場。


 
 
24年6月のバター価格、上昇基調の中で前年同期比34.6%高
 欧州委員会によると、2024年6月23日の週の乳製品価格(EU27カ国の平均)は、バターが100キログラム当たり633ユーロ(11万34円、前年同期比34.6%高)、全粉乳が同381ユーロ(6万6229円、同7.3%高)、チーズは同387ユーロ(6万7272円、同2.0%高)、ホエイパウダーが同79ユーロ(1万3733円、同12.2%高)といずれも前年同期を上回った(図3)。一方、脱脂粉乳は同243ユーロ(4万2241円、同1.8%安)と前年同期をわずかに下回った。
 中でもバターは、世界的に需要が好調な中で国際相場は上昇しており、EUの価格も22年後半以来の1トン当たり6000ユーロ(104万2980円)台で推移している。EUでは、チーズ向けの生乳仕向け割合の増加から、バター仕向け量が減少しており、1〜4月のバター生産量は前年に比べ減少している。中でもアイルランド(同9.5%減)やオランダ(同5.0%減)は、生乳出荷量の減少に伴うバター生産量の減少が目立っている。


 
 
24年第1四半期のチーズと全粉乳、輸出は安定
 欧州委員会によると、2024年第1四半期(1〜3月)のEU域外向け乳製品輸出量は、チーズ(前年同期比0.3%増)は前年同期並みとなった(表2)。一方、バター(同4.8%減)、脱脂粉乳(同11.0%減)はいずれも減少した。
 全粉乳の輸出量は、1〜2月は前年同月を大幅に上回ったが、3月は輸出競合国のニュージーランドが中東や東南アジア向けを増加させたため、同地域向けをはじめとしてEUの輸出量は前年同月を大幅に下回り(前年同月比21.9%減)、第1四半期はわずかな増加(前年同期比2.5%増)となった。また、バターや脱脂粉乳は、生産量の減少が輸出量の減少に影響した。


 
 
(調査情報部 渡辺 淳一)