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海外需給【牛乳・乳製品/NZ】畜産の情報 2024年8月号

生乳生産は回復の兆し、GDT平均取引価格は乳脂肪と乳タンパク質で明暗

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24年5月の生乳生産量、3カ月連続下落も回復の兆し
 ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2024年5月の生乳生産量は91万7000トン(前年同月比6.2%減)とかなりの程度減少し、3カ月連続で前年同月を下回った(図1)。この結果、23/24年度(6月〜翌5月)の累計でも、2113万2000トン(前年度比0.7%減)とわずかに減少した。この要因についてニュージーランド証券取引所(NZX)は、引き続き乾燥した気候による牧草の生育不足の影響としている。一方で、乾燥により遅れていた放牧地への施肥は一定程度進み、今後は降雨量が増えると予測されていることから、24/25年度の始期となる6月には、生乳生産量は上向きに転じると予測している。


 
 
24年5月の乳製品輸出量、主要3品目で引き続き減少傾向
 ニュージーランド統計局(Stats NZ)によると、2024年5月の乳製品輸出量は、前月から減少幅は縮小したものの、主要3品目で引き続き前年同月を下回った(表、図2)。品目別に見ると、脱脂粉乳は主要輸出先の中国やインドネシア向けは増加したものの、中東向けなどの減少が影響し、前年同月比8.3%減となった。全粉乳は、最大の輸出先である中国向けを中心とした減少から、同8.3%減となった。また、バターおよびバターオイルは、主要輸出先の豪州やサウジアラビア向けの減少から、同14.2%減となった。チーズは、最大の輸出先である中国向けは減少したものの、23年に二国間FTA(注1)が発効している英国向けが大きく伸びた(前月比:132.3%増、前年同月比:実績なし)ことで、同3.3%増となった。英国向けのチーズは、段階的に無税枠数量が引き上げられ、発効5年目で関税は完全に撤廃されるため、今後さらに伸びる可能性がある。
 
(注1)海外情報「豪英FTAおよびNZ英FTAが5月31日に発効 (その2:豪州およびニュージーランド側の反応)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003535.html)をご参照ください。
 


 
 
24年6月中旬のGDT平均価格、バターが7.1%高
 2024年6月18日開催のGDT(注2)平均取引価格は、脱脂粉乳とバターが前回開催時(同年6月4日)を上回り、特にバターはアジアや北アフリカからの旺盛な需要により、7350米ドル(119万1215円:1米ドル=162.07円(注3)、前回比7.1%高)と22年3月以来の記録的な高値となった(図3)。この結果、全乳製品の平均取引価格は1トン当たり3893米ドル(63万0939円、前回比1.8%高)とわずかに上昇した。現地報道によると、乳脂肪への旺盛な需要は、NZの生産者支払乳価の上昇に少なからず貢献しているとされている。一方、農協系金融機関ラボバンクが公表した最新の酪農市場レポートでは、中国の乳製品自給率の向上が近年の粉乳類の国際価格低迷の要因と分析しており、NZは中国に代わる輸出市場の開拓をさらに進めるべきとしている。

 
(注2)グローバルデイリートレード。月2回開催される電子オークションで、当該価格は乳製品の国際価格の指標とされている。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年6月末TTS相場。


 
 
(調査情報部 渡部 卓人)