農林水産省が令和6年7月9日に公表した「畜産統計(令和6年2月1日現在)」について、肉用牛、乳用牛、豚、ブロイラーおよび採卵鶏の概要を以下の通り報告する。
【肉用牛】飼養戸数、飼養頭数ともに前年比減
飼養頭数、肉用種は前年比0.8%増、乳用種は同3.7%減
肉用牛の飼養戸数は、小規模層を中心に減少傾向で推移しており、令和6年は3万6500戸(前年比5.4%減)と前年からやや減少した(表1)。飼養頭数は、近年、増加傾向にあったものの、267万2000頭(同0.6%減)と前年からわずかに減少した(図1)。この結果、肉用牛の1戸当たり飼養頭数は、前年から3.6頭増加し、73.2頭となった。
肉用牛は、肉用種および乳用種(注1)に大別され、飼養頭数のうち約7割を占める肉用種は189万7000頭(同0.8%増)と前年からわずかに増加した一方、約3割を占める乳用種は77万4900頭(同3.7%減)と前年からやや減少した(図2)。
肉用種の内訳を見ると、子取り用めす牛は前年比0.7%減の64万400頭(肉用牛全体に占める割合は24%)と前年からわずかに減少した一方、肥育用牛は同1.3%増の84万1600頭(同31%)、育成牛は同2.2%増の41万5300頭(同16%)と、ともに前年からわずかに増加した。
乳用種の内訳を見ると、交雑種は同0.4%減の56万7200頭(同21%)とわずかに、ホルスタイン種ほかは同11.5%減の20万7700頭(同8%)とかなり大きく、いずれも前年から減少した。
(注1)「畜産統計」では、乳用種の肉用牛とは、ホルスタイン種、ジャージー種などの乳用種の牛のうち、肉用を目的に飼養している牛で、乳用種と肉用種の交雑種を含むと定義されている。
下位6階層および「500頭以上」で飼養戸数、飼養頭数ともに前年比減
肉用牛の総飼養頭数規模別の飼養戸数については、100〜499頭までの2階層は前年を上回ったものの、1〜99頭までの下位6階層および最上位の500頭以上の階層はいずれも前年を下回った(図3)。同飼養戸数は、1〜4頭の階層が最も多く、全体の21%を占める7710戸(前年比9.1%減)、次いで10〜19頭の階層が6640戸(同5.7%減)、5〜9頭の階層が6610戸(同6.8%減)となっており、いずれも同18%を占めた。これら下位3階層の同割合は、前年から1ポイント低下の57%となった。また、同2%を占める500頭以上の階層は775戸(同2.1%減)、同4%を占める200〜499頭の階層は1450戸(同0.7%増)となり、これら上位2階層の同割合は前年と同じ6%となった。
肉用牛の総飼養頭数規模別の飼養頭数については、飼養戸数と同様の傾向が見られ、100〜499頭までの2階層は前年を上回ったものの、1〜99頭までの下位6階層および最上位の500頭以上の階層はいずれも前年を下回った(図4)。同飼養頭数は、500頭以上の階層が最も多く、全体の44%を占める117万3000頭(同0.3%減)、次いで200〜499頭の階層が同18%を占める47万頭(同1.7%増)となった。これら上位2階層の同割合は前年と同じ61%となった。
(畜産振興部 大西 未来)
【乳用牛】全国の飼養戸数、飼養頭数ともに前年比減
全国の飼養頭数、2年連続で減少
乳用牛の飼養戸数は減少して推移しており、令和6年2月1日現在の飼養戸数は、1万1900戸(前年比5.6%減)と前年からやや減少した(図5)。地域別に見ると、北海道では5170戸(同3.9%減)と前年からやや減少し、都府県では6730戸(同7.0%減)とかなりの程度の減少となった(表2)。また、乳用牛飼養頭数は、131万3000頭(同3.2%減)となり、平成29年以降増加していた飼養頭数は令和5年から2年連続での減少となった。地域別に見ると、北海道が82万1500頭(同2.5%減)、都府県では49万1200頭(同4.2%減)と、いずれも前年を下回った。一方、1戸当たりの飼養頭数は、110.3頭(同2.5%増)と前年からわずかに増加した。地域別に見ると、北海道が158.9頭(同1.5%増)、都府県が73.0頭(同3.0%増)といずれも増加している。
「100頭以上」の階層、飼養頭数の全体の半数を占める
乳用牛飼養戸数を成畜(満2歳以上の牛または2歳未満の経産牛。以下同じ。)の飼養頭数規模別に見ると、「100頭以上」の階層が2152戸(前年比2.2%増)と前年からわずかに増加し、全体の18.1%を占めた(表3)。このうち「200頭以上」の階層は、692戸(同2.5%増)と前年からわずかに増加した。100頭未満の階層はいずれも減少した。
また、乳用牛飼養頭数を成畜の飼養頭数規模別に見ると、「100頭以上」の階層が70万7600頭(同2.7%増)と前年からわずかに増加し、全体の53.9%を占めた。このうち「200頭以上」の階層は、41万2900頭(同2.4%増)とわずかに増加し、全体の31.4%を占めた。一方で、100頭未満の階層については、すべての階層で減少した。飼養戸数は前年から5.6%減少しているが、「100頭以上」の階層では飼養戸数および頭数ともに増加しており、経営の大規模化の進展が見受けられる。
乳用種めす出生頭数、3年ぶりに減少
直近1年間(令和5年2月〜令和6年1月)の乳用種めす出生頭数は、25万700頭(前年同期比8.9%減)となり、3年ぶりの減少となった(図6)。
(酪農乳業部 山下 侑真)
【豚】飼養戸数、飼養頭数ともに前年比減
飼養頭数、肥育豚は前年比2.0%減、子取り用めす豚は同4.2%減
豚の飼養戸数は、小規模層を中心に減少傾向で推移しており、令和6年は3130戸(前年比7.1%減)と前年からかなりの程度減少した(表4)。飼養頭数は、879万8000頭(同1.8%減)と前年からわずかに減少した(図7)。この結果、豚の1戸当たり飼養頭数は、前年から153.3頭増加し、2810.9頭となった。
内訳を見ると、子取り用めす豚は前年比4.2%減の75万8300頭とやや、肥育豚は同2.0%減の736万2000頭とわずかに、種おす豚は同7.5%減の2万4800頭とかなりの程度、いずれも前年から減少した一方、その他(販売される肥育用のもと豚を含む)は同4.4%増の65万3100頭と前年からやや増加した。
「3000頭以上」の階層、飼養頭数の全体の約7割を占める
肥育豚の飼養頭数規模別の飼養戸数については、100〜299頭および1000〜1999頭の2階層を除くすべての階層で前年を下回った(図8)。同飼養戸数は、2000頭以上の階層が最も多く、全体の32%を占める910戸(前年比6.4%減)、次いで1000〜1999頭の階層が同21%を占める607戸(同0.7%増)、500〜999頭の階層が同20%を占める577戸(同8.0%減)となった。これら上位3階層の同割合は前年と同じ73%となった。このうち3000頭以上の階層は、同22%を占める621戸となった。
肥育豚の飼養頭数規模別の飼養頭数については、1〜299頭までの下位2階層はいずれも前年を上回った一方、300頭以上の上位4階層はいずれも前年を下回った(図9)。同飼養頭数は、2000頭以上の階層が最も多く、全体の79%を占める663万4000頭(同1.8%減)となった。このうち3000頭以上の階層は、同69%を占める581万7000頭(同1.0%減)となった。
【ブロイラー】飼養羽数、出荷羽数ともに前年比増
飼養羽数は前年比2.4%増、出荷羽数は同1.5%増
ブロイラーの飼養戸数は、中規模層を中心に減少傾向で推移しており、令和6年は2050戸(前年比2.4%減)、出荷戸数は2100戸(同0.9%減)と、ともに前年からわずかに減少した(表5)。また、飼養羽数(注2)は1億4485万9000羽(同2.4%増)、出荷羽数(注3)は7億3192万9000羽(同1.5%増)と、ともに前年からわずかに増加した(図10)。この結果、ブロイラーの1戸当たり飼養羽数は、前年から3300羽増加し7万700羽、1戸当たりの出荷羽数は、同8500羽増加し34万8500羽となった。
(注2)2月1日現在で飼養している鶏のうち、ふ化後3カ月未満で出荷予定の鶏の飼養羽数。
(注3)前年の2月2日〜本年の2月1日の1年間に出荷した羽数。2月1日現在で飼養を休止し、または中止している場合でも、年間3000羽以上の出荷があれば、羽数が計上されている。
「50万羽以上」の階層、出荷羽数の全体の半数を占める
ブロイラーの出荷羽数規模別の出荷戸数については、3000〜9万9999羽および50万羽以上の最下位と最上位の2階層はいずれも前年を上回った一方、それ以外の3階層はいずれも前年を下回った(図11)。同出荷戸数は、10万〜19万9999羽の階層が最も多く、全体の30%を占める620戸(前年比0.5%減)、次いで3000〜9万9999羽の階層は同21%を占める434戸(同2.8%増)、30万〜49万9999羽の階層は同19%を占める391戸(同6.7%減)となった。
ブロイラーの出荷羽数規模別の出荷羽数については、出荷戸数と同様の傾向が見られ、3000〜9万9999羽および50万羽以上の最下位と最上位の2階層はいずれも前年を上回った一方、それ以外の3階層はいずれも前年を下回った(図12)。同出荷羽数は、50万羽以上の階層が最も多く、全体の53%を占める3億8755万9000羽(同10.5%増)、次いで30万〜49万9999羽の階層は同20%を占める1億4542万5000羽(同10.7%減)となった。
【採卵鶏】飼養戸数、飼養羽数ともに前年比減
飼養羽数、ひなは前年比5.7%減、成鶏めすは同0.9%増
採卵鶏の飼養戸数は、小規模層を中心に減少傾向で推移しており、令和6年は1640戸(前年比3.0%減)と、前年からやや減少した(表6)。また、飼養羽数は、ひなは3887万羽(同5.7%減)と前年からやや減少した一方、成鶏めすは1億2972万9000羽(同0.9%増)と前年からわずかに増加した(図13)。この結果、成鶏めすの1戸当たり飼養羽数は、前年から3000羽増加し、7万9100羽となった。
「10万羽以上」の階層、成鶏めす飼養羽数の全体の約8割を占める
成鶏めすの飼養羽数規模別の飼養戸数については、1000〜4万9999羽までの下位2階層はいずれも前年を下回った一方、10万羽以上の最上位の階層は前年を上回った(図14)。なお、5万〜9万9999羽の階層は前年並みとなった。同飼養戸数は、1000〜9999羽の階層が最も多く、全体の38%を占める560戸(前年比2.3%減)、次いで1万〜4万9999羽の階層は同29%を占める424戸(同9.8%減)、10万羽以上の階層は同21%を占める313戸(同2.3%増)、5万〜9万9999羽の階層は同12%を占める169戸(前年同)となった。
成鶏めすの飼養羽数規模別の飼養羽数については、1000〜4万9999羽までの下位2階層はいずれも前年を下回った一方、5万羽以上の上位2階層はいずれも前年を上回った(図15)。同飼養羽数は、10万羽以上の階層が最も多く、全体の81%を占める1億516万2000羽(同2.2%増)、次いで5万〜9万9999羽の階層は同9%を占める1196万羽(同2.5%増)となった。
(畜産振興部 大西 未来)