畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 牛肉生産量は増加も枝肉価格は高値を維持

海外需給【牛肉/EU】畜産の情報 2024年9月号

牛肉生産量は増加も枝肉価格は高値を維持

印刷ページ
24年4月の牛肉生産量、前年同月比16.4%増
 欧州委員会によると、2024年4月の牛と畜頭数は187万2350頭(前年同月比14.2%増)とかなり大きく増加し、1頭当たりの枝肉重量も295.2キログラム(同2.0%増)とわずかに増加した。この結果、牛肉生産量(EU27カ国)は55万2630トン(同16.4%増)と大幅に増加した(図1)。また、同年1〜4月の累計牛肉生産量は219万1310トン(前年同期比6.7%増)と前年同期をかなりの程度上回った。
 英国農業園芸開発委員会(AHDB)によると、牛肉需要の減退や環境規制などから域内で繁殖牛群を縮小する傾向が強まり、特に繁殖雌牛の淘汰とうたが進んだとした上で、24年後半は牛肉生産量の減少が見込まれるとされている。
 欧州委員会は、24年5月3日に公表した農畜産物の短期的見通し(注1)の中で、24年の牛肉生産量を前年比2.4%減の630万4000トンと見込んでいる。
 
(注1)海外情報「欧州委員会、食肉の短期的需給見通しを公表(EU)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_003794.html)をご参照ください。

 
24年7月の枝肉卸売価格、引き続き堅調に推移
 2024年7月の牛枝肉平均卸売価格(注2)は、100キログラム当たり504.12ユーロ(8万3881円:1ユーロ=166.39円(注3)、前年同月比4.5%高)となった(図2)。前月比では2.5ユーロ(416円)安となったが、24年に入っても堅調に推移している。現地報道によると、飼養頭数が減少している中で、パッカー(食肉処理・加工業者)が稼働率を維持するためにと畜牛を積極的に受け入れていることが、生体牛の高値が続く要因とされている。一方で、小売価格には転嫁できていないため、パッカーの利益は圧縮しているとされている。
 
(注2)若雄牛(A)、去勢牛(C)および若齢牛(Z)のうち枝肉の格付けが上(R)、枝肉の脂肪の付着度合が平均的(5段階中3)なものの平均価格(A/C/Z-R3)。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年7月末TTS相場。
 

 
24年5月の牛肉輸出量、前年同月比14.4%増
 2024年5月の牛肉輸出量は、4万1807トン(前年同月比14.4%増)とかなり大きく増加した(表1)。最大の輸出先である英国向けは冷蔵(同4.3%減)、冷凍(同9.7%減)ともに前年同月を下回ったものの、23年にEU産牛肉の輸入を再開した冷蔵のトルコ向け(同38.0%増)が大幅に増加したことに加えて、2月にアルジェリアがスペイン産牛肉の輸入を再開したことが輸出増に寄与した。
 一方、24年5月の牛肉輸入量は、1万9042トン(同6.8%減)とかなりの程度減少した(表2)。米国農務省海外農業局(USDA/FAS)の分析によると、域内の経済活動の減速や小売価格の高騰による牛肉需要の低迷、主要輸入先である英国の牛肉供給がひっ迫傾向にあることから、24年の牛肉輸入量は前年比2.5%減の35万トンと予測されている。



 
 
(調査情報部 藤岡 洋太)