畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 24/25年度シーズン開始、輸出振るわず乳価への影響懸念

海外需給【牛乳・乳製品/NZ】畜産の情報 2024年9月号

24/25年度シーズン開始、輸出振るわず乳価への影響懸念

印刷ページ
24年6月の生乳生産量、前年同月下回るも減少幅は縮小傾向
 ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2024/25年度(6月〜翌5月)の幕開けとなる6月の生乳生産量は22万8000トン(前年同月比1.7%減)とわずかに減少し、4カ月連続で前年同月を下回った(図1)。この要因についてニュージーランド証券取引所(NZX)は、昨シーズン終盤の干ばつ傾向により、一部の地域で生乳生産の出足が鈍かったためとしている。実際に6月の牧草の生育状況を見ると、北島は平年を上回る成長率であったが、南島では土壌の乾燥が続いたため、6月後半には牧草生育指数(PGI)(注1)が大きく低下している。今後の生乳生産の見通しとしては、7月は前年同月比0.2%減となるものの、8月以降は牧草の生育が回復することで前年同月を上回って推移すると予測している。
 
(注1)NZXが提供している牧草の生育状況を示す指標。ニュージーランド国立水・大気研究所(NIWA)の気象予測データを用いて算出しており、生乳生産量と正の相関を示すことで知られている。
 


 
24年6月の乳製品輸出量、主要4品目すべてで減少
 ニュージーランド統計局(Stats NZ)によると、2024年6月の乳製品輸出量は、主要4品目すべてで前年同月を下回った(表、図2)。これは、最大の輸出先である中国の需要減退が大きく響いており、同国向けの輸出量は主要4品目すべてで大幅減となった。特に、バターおよびバターオイルの輸出量は前年同月比で約5割の減少となった。
 また、23/24会計年度(7月〜翌6月)の主要4品目の総輸出量は、271万9838トン(前年同期比2.4%増)とわずかに増加したものの、総輸出額は世界的な乳製品価格の下落が影響し、166億6454万NZドル(1兆5331億円:1NZドル=92.00円(注2)、同9.2%減)とかなりの程度減少した。
 
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年7月末TTS相場。



 
 
24年7月中旬のGDT平均価格、チーズが6.0%高
 2024年7月16日開催のGDT(注3)平均取引価格は、バターとチーズが前回開催時(同年7月2日)を上回り、特にチーズは中東・アフリカからの引き合いが高まり、4217米ドル(64万7056円:1米ドル=153.44円(注2)、前回比6.0%高)とかなりの程度上昇した(図3)。この結果、全乳製品の平均取引価格は1トン当たり3837米ドル(58万8749円、前回比1.5%高)とわずかに上昇した。NZXは、「乳脂肪の短期的な需給ひっ迫により全体平均が上向いたが、バター価格は前々回開催時(同年6月18日)をピークに下降局面に入っていることから、今後の上昇局面は見込めない」とし、「粉乳類の需要低迷が続く限り、今後の乳製品価格は軟化する可能性が高い」としている。
 
(注3)グローバルデイリートレード。月2回開催される電子オークションで、当該価格は乳製品の国際価格の指標とされている。

 
(調査情報部 渡部 卓人)