24年8月の肉牛価格、過去5カ年平均と同水準まで上昇
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、豪州の肉牛生体取引価格指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2024年8月に入り、これまでの上昇傾向からいったん下落したが、その後は再び上昇に転じ、8月30日時点で1キログラム当たり686豪セント(689円:1豪ドル=100.44円(注1))と過去5カ年平均と同水準となった(図1)。豪州気象局(BOM)の見通しでは、主要肉用牛生産地域であるクイーンズランド州やニューサウスウェールズ州で平年以上の降雨が見込まれていることから、牧草の育成を見込んだ牧草肥育農家からの需要増により、今後同価格はさらなる上昇が見込まれる状況にある(図2)。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年8月末TTS相場。
他方で牧草の生育状況に左右されない穀物肥育牛肉の需要が高まりを見せており、24年6月末のフィードロット飼養頭数および収容能力は、過去最大となっている(注2)。
24年8月の週間成牛と畜頭数、高位安定で推移
MLAによると、2024年8月の週間成牛と畜頭数は、同月第4週時点で14万1110頭と安定して推移している(図3)。同週では、クイーンズランド州以外の州で軒並み減少したものの、クイーンズランド州では過去4年間で最大となる7万4974頭(全体の53.1%)がと畜され、前週から9110頭増加したことで他州の減少分を相殺し、14万頭規模のと畜頭数を維持している。
24年7月の牛肉輸出量、過去最高を記録
豪州農林水産省(DAFF)によると、2024年7月の牛肉輸出量は12万9998トン(前年同月比33.6%増)と大幅に増加し、15年3月の12万3464トンを超えて、月次の牛肉輸出量データが存在する1994年以来の過去最高を記録した(表)。
現地報道によると、この記録は、安定したと畜頭数と枝肉重量の増加と海外からの需要増が主な要因であるが、ハンバーガー用パテに用いられるひき肉用が主体の米国向けの増加が大きく影響しており、同月の同国向けは3万8540トン(同61.2%増)と大幅に増加している。また米国の牛肉供給量減少に伴う日本や韓国からの豪州産牛肉への代替需要の高まりも、反映されている。
一方で、主要輸出先のうち中国向けは、1万6249トン(同3.3%減)とやや減少しているが、減少幅は前月(同32.6%減)に比べて小さくなっている。現地報道によると、同国内の牛肉需要は低迷しているものの、米国大統領選におけるトランプ氏再選の可能性があることから、その前に貿易の不確実性に対する措置として、中国政府が輸入牛肉を備蓄していることを示唆している。
(調査情報部 国際調査グループ)