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海外需給【鶏肉/ブラジル】畜産の情報 2024年10月号

24年1〜7月鶏肉輸出量は、中国向けが大幅減も前年同期並み

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24年の鶏肉生産量は前年をわずかに上回る見込み
 ブラジル国家食糧供給公社(CONAB、2024年7月25日公表)によると、24年のブラジルの鶏肉生産量は1517万6000トン(前年比1.7%増)と前年をわずかに上回り、2年連続の増加が見込まれている(図1)。鶏肉生産量が1500万トンを超えるのは21年以来3年ぶりで、22〜23年と比較して鶏肉生産者の経営環境が改善しているとみられる。生産量全体の3分の1を占める輸出向け、同3分の2を占める国内市場向けとも前年をわずかに上回ると見込まれている。

 
24年1〜7月鶏肉輸出量、中東向けを中心に中国向けの落ち込みを補完
 ブラジル開発商工サービス省貿易局(SECEX)によると、2024年1〜7月の鶏肉輸出量は282万3628トン(前年同期比0.2%増)と前年同期並みとなった(表)。
 輸出先別に見ると、最大の中国向けは33万7125トン(同23.6%減)と高水準となった前年同期の反動で大幅に下回った。ただし、同国向け輸出については、中国政府が24年2月、ブラジル産鶏肉に課していた反ダンピング関税を解除したことに加え、同年3月には新たにブラジルの八つの鶏肉処理施設に対する輸出許可をしたことなどが今後の増加につながるとみられる。一方、アラブ首長国連邦:27万8390トン(同13.5%増)、サウジアラビア:23万2364トン(同11.1%増)、イラク:12万231トン(同23.9%増)といった中東向けは、前年同期をかなり大きく上回っている。また、中国、アラブ首長国連邦に次ぐ日本向けは25万8677トン(同1.6%増)と前年同期をわずかに上回った。

 
24年1〜8月の鶏肉卸売価格は比較的安定して推移
 サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、直近(2024年8月29日時点)のブラジルの鶏肉卸売価格(サンパウロ州)は、1キログラム当たり7.37レアル(190円:1レアル=25.78円(注)、前年同期比16.2%高)となった(図2)。24年の鶏肉卸売価格は、おおむね同7.0〜7.5レアル(180〜193円)の範囲で推移しており、23年の価格を上回る水準で推移している。
 
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」2024年8月末TTS相場および現地参考為替相場(Selling)。

 
 
リオグランデドスル州で18年ぶりにニューカッスル病の発生を確認
 ブラジル農牧省(MAPA)は2024年7月17日、南部リオグランデドスル州アンタゴルダ市の商業養鶏農家においてニューカッスル病(NCD)の発生を確認したと公表した。これを受けて同省は7月19日、同州での動物衛生緊急事態宣言(90日間有効)を発令してまん延防止対策を強化し、その後、事態の終息に伴い8月6日、同宣言の終了が決定した。また、同省は7月19日、貿易相手との二国間協定に基づき44カ国への輸出認証を一時的に停止し、鶏肉、鶏肉製品などの輸出を予防的に停止することを公表した。その後、同省は7月26日、国際獣疫事務局に対しNCDの発生が終息したことを通知したとしており、二国間協定に基づき輸出認証の停止措置が解除されていくものとみられる。
 ブラジルでのNCDは、06年に北部アマゾナス州、中西部マットグロッソ州、リオグランデドスル州の庭先養鶏農家で確認されて以来、18年ぶりの発生となる。
 
(調査情報部 井田 俊二)