24年7月の生乳生産量、前年をかなりの程度上回り過去最大を記録
ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2024年7月の生乳生産量は31万トン(前年同月比8.4%増)とかなりの程度増加し、7月としては過去最大となった(図1)。この要因についてニュージーランド証券取引所(NZX)は、例年この時期は湿潤な気候により土壌水分が過剰になるところ、北島の降雨量が平年より少なく、土壌環境が改善に向かったことで、牧草の生育に寄与したことに加え、最大の酪農生産地帯であるワイカト地方などで、一部の乳牛の分娩期への移行が円滑に進み、搾乳頭数が増えたためとしている。
今後の生乳生産の見通しとして、生乳生産の最盛期となる9〜11月に向けて大きな不安材料はないとしており、牧草の生育状況などから順調な生産が続くと予測している。
24年7月の乳製品輸出量、脱脂粉乳が大幅増
ニュージーランド統計局(Stats NZ)によると、2024年7月の乳製品輸出量は、バターおよびバターオイルを除く主要3品目で前年同月を上回った(表、図2)。特に、脱脂粉乳の輸出量は前年同月比で約6割の増加となった。最大の輸出先である中国のみならず、インドネシアやフィリピンといった東南アジア向けが好調となったことに起因している。一方、バターおよびバターオイルは、主要輸出先である豪州やメキシコ向けがそれぞれ減少したことから、全体でもかなり大きく下回った。
GDT平均価格の上昇を受け、24/25年度の生産者支払乳価を引き上げ
2024年8月20日開催のGDT(注1)平均取引価格は、チーズを除く3品目が前回開催時(同年8月6日)を上回り、特に全粉乳は、北アジアからの需要が回復傾向にあり、1トン当たり3482米ドル(50万7676円:1米ドル=145.80円(注2)、前回比6.8%高)と21年3月以来の上昇幅を記録した(図3)。この結果、全乳製品の平均取引価格は同3920米ドル(57万1536円、前回比6.5%高)と、同じく21年3月以来の上昇幅となった。
このような中、NZ乳業最大手のフォンテラ社は24年8月23日、24/25年度(6月〜翌5月)の生産者支払乳価を生乳の固形分(注3)1キログラム当たり平均0.5NZドル(46円:1NZドル=92.79円(注2))引き上げ、同8.5NZドル(789円)にすると発表した。引き上げの理由について同社のハレル最高経営責任者は、最近のGDT価格の上昇を踏まえたものと説明している。
(注1)グローバルデイリートレード。月2回開催される電子オークションで、当該価格は乳製品の国際価格の指標とされている。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年8月末TTS相場。
(注3)乳脂肪分および乳タンパク質。
(調査情報部 渡部 卓人)