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【令和5年度食料需給表・食料自給率について】畜産の情報 2024年11月号

【令和5年度食料需給表・食料自給率について】

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令和5年度の食料自給率、前年度並みの38%
 農林水産省は令和6年8月8日、「令和5年度食料需給表(概算)」(注1)および「令和5年度食料自給率について」を公表した。
 食料自給率とは、日本国内に供給されたすべての食料(以下「国内仕向量」という)に対する国内で生産された食料の割合を示す指標であり、供給熱量(カロリー)ベースおよび生産額ベースで計算する総合食料自給率と、重量ベースの品目別自給率の2種類がある。
 総合食料自給率のうち、基礎的な栄養価であるエネルギー(カロリー)に着目した供給熱量ベースの総合食料自給率を見ると、5年度は、小麦の生産量増加や油脂類の消費量減少がプラス要因となる一方で、てん菜の糖度低下による国産原料の製糖量の減少がマイナス要因となり、38%と前年度並みとなった(表)。また、供給熱量ベースの食料国産率(注2)も、47%と前年度並みとなった。
 経済的価値に着目して、国民に供給される食糧の生産額に占める国内生産の割合を示す指標としては、生産額ベースの総合食料自給率がある。これを見ると、輸入食料の量は前年度と同程度であったものの、国際的な穀物価格や生産資材価格の水準が前年度に比べて落ち着き、特に、畜産物、油脂類(飼料、原料を含む)の輸入総額が減少したことなどにより、61%と前年度から3ポイント上昇した。また、生産額ベースの食料国産率についても、67%と前年度から2ポイント上昇した。
 一方の品目別自給率は、各品目における自給率を重量ベースで算出したものである。分子を国内生産量、分母を国内消費仕向量(注3)として計算したものであり、各要素の増減が同自給率の増減に反映される構成となっている。
 このうち、肉類(鯨肉を除く。以下同じ)は、前年度並みの53%となった。また、肉類全体の国民1人・1年当たり供給純食料(注4)は、33.9キログラムと前年度から0.1キログラム減少した。
 なお、畜種によって異なるものの、畜産全体で見ると、家畜に給与する飼料のうち、20%は主に国産品が占める粗飼料、80%は主に輸入品が占める濃厚飼料となっている(可消化養分総量(注5)(TDN)換算ベース)。飼料自給率(TDN換算ベース)については、27%と前年度から1ポイント上昇した。このうち、粗飼料自給率は80%と前年度から2ポイント上昇し、濃厚飼料自給率は前年度並みの13%となった。また、飼料自給率を考慮した肉類の品目別自給率については、飼料用穀物の多くを海外から輸入していることから低い水準にあり、前年度並みの8%となった。

(注1)「食料需給表」とは、1年間に国内で供給される食料の生産から最終消費に至るまでの総量を明らかにするとともに、国民1人当たりの供給純食料および栄養量を示したものであり、食料自給率の算出の基礎となるものである。計測期間は、牛肉、豚肉、牛乳・乳製品、鶏卵については、当年4月1日から翌年3月31日まで、鶏肉については、平成21年度以降、暦年(当年1月1日から12月31日まで)となっている。
(注2)飼料が国産か輸入かにかかわらず、畜産物全体の供給に占める国内生産の状況を評価する指標である。
(注3)1年間で国内市場に出回った食料の量を表す数。国内消費仕向量=国内生産量+輸入量−輸出量±在庫増減量によって算出される。
(注4)各品目の1年間に国内で消費に回された食料のうち、食用向けの量を表す「粗食料」を人間の消費に直接利用可能な形態に換算した量を日本の総人口(各年度10月1日現在)で除したもの。なお、令和5年10月1日現在の人口は、1億2435万2000人(前年度比0.5%減)。
(注5)エネルギー含量を示す単位であり、飼料の実量とは異なる。

 
 以下、食肉(牛肉、豚肉、鶏肉)、牛乳・乳製品、鶏卵の品目別自給率(重量ベース)、国民1人・1年当たりの供給純食料について紹介する。
 
1 牛 肉
令和5年度の牛肉自給率、前年度から1ポイント上昇の40%
 令和5年度の牛肉自給率は、40%と前年度を1ポイント上回り、4年連続の上昇となった(図1)。
 国内生産量(枝肉換算)については、平成29年度以降、畜産クラスター事業などの取り組みにより和牛を中心におおむね増加傾向となっている。令和5年度は、和牛および交雑種が増加した一方、乳用種が減少し、全体では50万2000トン(前年度比1.0%増)と前年度をわずかに上回った。
 輸入量については、近年、増加傾向で推移していたが、2年度以降は新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の影響による外食需要の低迷などから減少傾向にあり、5年度は、物価の上昇に伴う消費者の生活防衛意識の高まりなどによる需要低迷の他、為替や現地相場高の影響などにより、71万7000トン(同10.8%減)と前年度をかなりの程度下回った。
 その他、輸出量については、特に、台湾や香港での外食需要の回復により、1万2000トン(同9.1%増)と前年度をかなりの程度上回り、国内在庫については、3万6000トンが取り崩された。
 この結果、国内消費仕向量については、124万3000トン(同1.3%減)と前年度をわずかに下回り、4年連続の減少となった。
このため、国民1人・1年当たり供給純食料(精肉換算)については、6.1キログラム(同1.3%減)と前年度から0.1キログラム減少した。
 なお、飼料自給率を考慮した自給率は、12%と前年度から1ポイント上昇した。肉用牛に給与される飼料には、国産品で賄われる割合が高い粗飼料が含まれていることから、牛肉の同自給率は、濃厚飼料を主に給与される豚肉や鶏肉に比べて高い水準にある。



 
 
2 豚 肉
令和5年度の豚肉自給率、前年度並みの49%
 令和5年度の豚肉自給率は、49%と前年度並みとなった(図2)。
 国内生産量(枝肉換算)については、近年、疾病発生の影響などにより減少した時期はあったものの、畜産クラスター事業などの取り組みにより増加傾向にあり、5年度は、出荷頭数は横ばいであるものの、1頭当たりの出荷体重が増加したことから、129万8000トン(前年度比0.9%増)と前年度をわずかに上回った。
 輸入量については、為替や現地相場高の影響などにより、133万トン(同5.5%減)と前年度をやや下回った。
 その他、輸出量については、香港およびシンガポールでの安定した需要を背景に、3000トン(同50.0%増)と前年度を大幅に上回り、国内在庫については、2万9000トンが取り崩された。
 この結果、国内消費仕向量については、265万4000トン(同0.2%増)と前年度並みとなった。
 このため、国民1人・1年当たりの供給純食料(精肉換算)は、前年度並みの13.1キログラムとなった。
 なお、豚は、輸入品の占める割合が高い濃厚飼料が主に給与されており、飼料自給率を考慮した自給率は、7年連続で6%となった。
 



 
3 鶏 肉
令和5年の鶏肉自給率、前年から1ポイント上昇の65%
 令和5年の鶏肉自給率は、65%と前年から1ポイント上昇した(図3)。
 国内生産量(骨付肉換算)については、消費者の健康志向の高まりや根強い国産志向を背景に増加傾向で推移しており、5年も、169万トン(前年比0.5%増)と、12年連続で過去最高を更新した。
 輸入量については、国内生産量の3〜4割程度の水準で推移しており、5年は、ブラジルでの高病原性鳥インフルエンザ(以下「HPAI」という)の発生の他、為替の影響などによる鶏肉調製品の輸入減などから、91万4000トン(同2.5%減)と前年をわずかに下回った。
 その他、輸出量については、日本国内でのHPAI発生に伴う輸出先側の輸入停止の影響が見られたものの、香港での需要の拡大などから、4000トン(同33.3%増)と前年を大幅に上回り、国内在庫については、増減はなかった。
 この結果、国内消費仕向量については、260万トン(同0.6%減)と前年をわずかに下回った。
 このため、国民1人・1年当たりの供給純食料(正肉換算)は、14.4キログラム(同0.7%減)と前年から0.2キログラム減少した。
 なお、鶏は、輸入品の占める割合が高い濃厚飼料が主に給与されており、飼料自給率を考慮した自給率は、9%と前年から1ポイント上昇した。



 
 
4 牛乳・乳製品
令和5年度の牛乳・乳製品自給率、63%と2年ぶりに増加
 令和5年度の牛乳・乳製品の自給率(以下、断りない限り生乳換算ベース)は、前年度を1ポイント上回り、63%となった(図4)。飼料自給率を考慮した自給率についても、28%と前年度を1ポイント上回った。
 国内生産量(生乳生産量)は、生乳需給の緩和等を背景とした生産抑制や夏場の猛暑が影響し、732万4000トン(前年度比2.8%減)と2年連続の減少となった。用途別の内訳を見ると、飲用向けが384万トン(同2.6%減)、乳製品向けが343万7000トン(同3.0%減)といずれも前年度を下回った。
 輸入量は、428万1000トン(同3.8%減)と4年連続の減少となった。輸出量は、脱脂粉乳が3000トン(同78.6%減、製品重量ベース)と大幅に減少したことなどにより、6万8000トン(同50.4%減)と大幅に減少した。また、需要量を示す国内消費仕向量は1170万2000トン(同4.1%減)と前年度をやや下回った。
 チーズの国内消費仕向量は、食生活の多様化などに伴い拡大していたが、令和元年度以降、COVID−19の影響による外食需要の減少に加え、令和4年度以降は商品の値上げや物価高騰による買い控えなどから、29万5000トン(同4.8%減、製品重量ベース)と減少している。
 牛乳・乳製品の国民1人・1年当たり供給純食料は、90.1キログラム(同4.0%減)と前年度から減少した。
 



 
5 鶏 卵
令和5年度の鶏卵自給率、前年度から1ポイント低下の96%
 令和5年度の鶏卵自給率は、96%と前年度から1ポイント低下したが、引き続き畜産物の中で最も高い水準を維持した(図5)。
 国内生産量(殻付換算)については、2年度以降、COVID−19の影響による価格低下やHPAIの発生の影響などにより減少傾向で推移しており、5年度も、247万8000トン(前年度比3.1%減)と前年度をやや下回り、4年連続の減少となった。
 輸入量については、加工原料用の粉卵が約9割を占めているが、4年度シーズンのHPAIの影響で輸入価格が高騰したことなどにより、11万トン(同6.0%減)と前年度をかなりの程度下回った。
 その他、輸出量については、日本国内でのHPAI発生に伴う輸出先側の輸入停止や国内需給のひっ迫などから、2万トン(同25.9%減)と前年度を大幅に下回り、国内在庫については、増減はなかった。
 この結果、国内消費仕向量については、256万8000トン(同3.0%減)と前年度をやや下回った。
 このため、国民1人・1年当たり供給純食料(付着卵白および殻を除く)は、16.5キログラム(同3.2%減)と前年度から0.6キログラム減少した。
 なお、鶏は、輸入品の占める割合が高い濃厚飼料が主に給与されており、飼料自給率を考慮した自給率は、3年連続で13%となった。
 



 
(食肉、鶏卵:畜産振興部 丸吉 裕子)
(牛乳・乳製品:酪農乳業部 天野 明日香)