24年9月の肉牛価格、一部地域の降雨不足により軟調に推移
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、豪州の肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、南オーストラリア(SA)州、ビクトリア(VIC)州など南部地域の降雨不足(図1)により、牧草肥育農家からの需要が減少したため、10月2日時点で1キログラム当たり643豪セント(648円:1豪ドル=100.73円
(注))と過去5カ年平均を下回った(図2)。一方、豪州気象局(BOM)の見通しでは、10月以降は主要肉用牛生産地域のクイーンズランド(QLD)州、ニューサウスウェールズ(NSW)州を中心に平年以上の降雨が予想されている。このため、牧草の育成を見込んだ牧草肥育農家からの需要回復により、価格が上向きに転じる可能性がある。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年9月末TTS相場。
成牛と畜頭数は安定して推移、ピークは2025年と予測
MLAによると、2024年9月の週間成牛と畜頭数は、同月第4週時点で13万9755頭と安定して推移している(図3)。MLAが9月に公表した業界予測によると、比較的安定している天候や海外の旺盛な牛肉需要を背景に牛群頭数は縮小傾向で推移しており、26年には牛群の再構築に向かう見通しであるため、と畜頭数および牛肉生産量は25年にピークに達するとされている。
また、現地報道によると、QLD州にある国内最大の牛肉加工施設である豪JBS社のディンモア工場は、コロナ禍以降、労働力不足のため減産で操業していたが、この1年で700名以上の従業員を追加で雇用するなど労働環境は改善傾向にあるとされている。24年7月末に現地取材した際は、稼働率が1日当たり約2800頭まで回復しており、同社は25年1月までに生産能力をフル稼働(同3400頭)に戻すことを目指していることから、今後、と畜の受入れ余力は拡大する可能性がある。
牛肉輸出量は堅調に推移、UAEとのFTA締結を業界は歓迎
豪州農林水産省(DAFF)によると、2024年8月の牛肉輸出量は12万1797トン(前年同月比19.0%増)と大幅に増加し、24年7月、15年3月に続く3番目の高水準となった(表)。輸出先別に見ると、米国、日本、韓国向けが好調を維持しており、特に米国向けは24年1〜8月の累計で前年同期比69.4%増と大きな伸びを見せている。また、東南アジアも新たな成長市場として存在感を見せており、その中でもインドネシア向けは同じく4万8956トン(同6.4%増)と堅調に推移している。
豪州連邦政府は9月17日、中東地域で初となるアラブ首長国連邦(UAE)との自由貿易協定(FTA)に合意・調印したと発表した。協定の発効により、99%以上の品目の関税が撤廃され、食品分野だけでも5000万豪ドル(50億3650万円)の関税削減が見込まれている。中東地域は従来から赤身肉輸出の重要な成長市場として位置付けられており、各メディアは業界からの期待感の大きさを報じている。連邦政府は早期の批准・発効に向けて協議を進めるとしており、協定発効が豪州産牛肉の需給にどのような影響を与えるのか、その動向が注目される。
(調査情報部 国際調査グループ)