24年1〜8月の牛と畜頭数は前年同期比4.4%増で推移
ウルグアイ食肉協会(INAC)によると、2024年1〜8月の牛と畜頭数は152万2000頭(前年同期比4.4%増)と前年をやや上回った(図1)。24年に入り同国の肉用牛生産は、秋期の大雨や洪水、冬期の乾燥や低温に伴う厳しい降霜といった不安定な天候の影響を受けた。このため、牧草の状況が悪化し牧草肥育牛を中心に出荷は減少したが、穀物肥育牛の出荷増がこの落ち込みを補完したとみられる。
ウルグアイでは近年、ラニーニャ現象の影響による乾燥気候が発生し、特に22年10月〜翌2月は乾燥の状況が厳しく、水不足などによる肉牛生産への影響が生じた。このため、同国農牧水産省は22年10月、農業緊急事態を宣言し、生産者に対して飼料や水不足対策などの支援措置を講じた。当初90日間(23年1月24日まで)とされていた同宣言による支援措置は、その後数回延長され、24年1月3日に終了した。
24年1〜7月の牛肉輸出量、中国向け比率は前年同期の6割から4割に低下
ウルグアイ中央銀行によると、2024年1〜7月の牛肉輸出量は、中国以外の輸出先への増加により20万2109トン(前年同期比7.0%増)とかなりの程度上回った。一方、平均輸出単価は、中国での牛肉需給の緩和や他の牛肉輸出国との競合、米ドルに対するウルグアイペソ高などにより1トン当たり5497米ドル(79万84円:1米ドル=143.73円、前年同期比6.9%安)とかなりの程度低下した(表)。
輸出先別に見ると、最大の中国向けは8万7326トン(同25.6%減)と大幅に減少し、全体の輸出量に占める割合は43.2%と前年同期(62.2%)から19.0ポイント低下した。また、同国向け平均輸出単価は、同4063米ドル(58万3975円、同15.4%安)とかなり大きく下回った。これは、中国国内の牛肉需給の緩和や他の牛肉輸出国との競合などによるものである。一方、米国向けは5万2642トン(同92.4%増)と大幅に増加し、全体の輸出量に占める割合は26.0%と前年同期(14.5%)から11.5ポイント上昇した。この他、24年1月にこれまでの骨なし牛肉に加え、骨付き牛肉の輸出が認められたイスラエル向けが9900トン(同約2.6倍)、ウクライナ紛争を契機に一時停滞していたロシア向けが7186トン(同約37.8倍)と大幅に増加するなど、中国向けの落ち込みを相殺した。また、日本向けは4155トン(同37.9%増)と大幅に増加した。これまで日本向けは冷蔵牛肉が中心であったが、22年には冷凍品が輸出量の4割を占め、23年には同6割以上を占めており、24年1〜7月には冷凍品が同8割以上を占めている(図2)。
去勢牛生産者出荷価格は牛肉需給が引き締まったため上昇傾向で推移
INACによると、直近(2024年9月第2週)の去勢牛生産者出荷価格は、前年同期比15.4%高の1キログラム当たり4.08米ドル(586円)となった(図3)。最近の価格推移を見ると、23年5〜10月は下落傾向で推移したが、23年11月ごろから上昇傾向で推移している。これは、米国やイスラエル向けなど輸出需要が増加したことに加え、秋から冬にかけて不安定な天候の影響により、牧草肥育牛の出荷が滞り牛肉需給が引き締まったためとみられる。
(調査情報部 井田 俊二)