24年7月の生乳出荷量、前年同月比0.5%減
欧州委員会によると、2024年7月の生乳出荷量(EU27カ国)は、1250万3000トン(前年同月比0.5%減)と6カ月ぶりに前年同月をわずかに下回った(図1、表1)。主要生産国別に見ると、フランス(同1.2%増)、ポーランド(同1.5%増)およびイタリア(同1.4%増)はいずれも前年同月を上回った一方で、ドイツ(同1.3%減)、オランダ(同3.1%減)、アイルランド(同3.3%減)はいずれも前年同月を下回った。
EU加盟国の多くの地域で気温が平年を上回り、生乳出荷量に影響を及ぼしている。中でも減少幅が大きかったアイルランドは、硝酸塩に関する規制の影響に加えて高温や豪雨などの天候不順による放牧環境の悪化により、これに次ぐオランダは、同規制の影響により、いずれも生乳出荷量の減少につながった。さらに、ドイツも北西部を中心に生乳出荷量の減少がみられている。農産物の市場情報を提供するドイツのAMI社によると、欧州ではブルータングの感染が拡大しており、今後の生乳出荷量への影響が懸念されている。現地報道によると、ブルータングに感染した牛の死亡はまれであるが、生乳生産量が減少するため、と畜に仕向ける生産者もいるとされる。
24年8月の生乳取引価格、前年同月比7.8%高
欧州委員会によると、2024年8月の生乳取引価格(EU27カ国の平均)は、100キログラム当たり46.93ユーロ(1キログラム当たり75.52円:1ユーロ=160.93円
(注)、前年同月比7.8%高)と4カ月連続で前年同月を上回った(図2)。前月比では、バターを中心とする乳製品価格の上昇に連動し、同0.63ユーロ(101円、前月比1.4%高)上昇した。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年9月末TTS相場。
24年9月のバター価格、過去最高値を更新
欧州委員会によると、2024年9月15日の週の乳製品価格(EU27カ国の平均)は、脱脂粉乳が100キログラム当たり253ユーロ(1キログラム当たり407円、前年同期比10.8%高)、全粉乳が同427ユーロ(同687円、同30.3%高)、チーズが同395ユーロ(同636円、同4.7%高)、ホエイパウダーが同90ユーロ(同145円、同25.6%高)といずれも前年同期を上回った(図3)。
中でもバターは、同746ユーロ(同1201円、同69.4%高)と前年同期を大幅に上回り過去最高値を更新した。国際市場価格が高値で推移している中で、生乳出荷量の減少や干ばつによる乳脂肪分の減少などが、価格を押し上げている。
24年上半期、チーズの輸出量は前年同期並み、その他の乳製品は減少
欧州委員会によると、2024年上半期(1〜6月)のEU域外向け乳製品輸出量は、チーズ(同0.1%減)が堅調な国際需要に後押しされ前年同期並みとなった(表2)。一方、チーズ向け生乳の確保により前年に比べて生産量が減少しているバター(同4.7%減)および脱脂粉乳(同8.7%減)は、いずれも輸出量は減少した。
なお、全粉乳は、ニュージーランドに比べEU産の価格競争力が低いため、輸出量(同20.4%減)は前年同期を大幅に下回った。
(調査情報部 渡辺 淳一)