24年10月の肉牛価格、過去5カ年を下回るものの安定して推移
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、豪州の肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、直近11月1日時点で1キログラム当たり633豪セント(651円:1豪ドル=102.85円
(注1))と過去5カ年平均を下回って推移した(図1)。一方で、10月は一定の降雨がみられたこともあり、牧草肥育農家の需要増により価格は上向きに転じつつある。また、後述すると畜頭数の増加は、牛群の維持または再構築を望む肥育農家の需要増の一因となるものであり、肥育農家のもと牛の導入意欲も高まっていると考えられる。加えて、豪州気象局(BOM)の見通しでは、11月は主要肉用牛生産地域であるクイーンズランド(QLD)州、ニューサウスウェールズ(NSW)州で平年以上の降雨が予想されていることから、今後、肉牛価格は上昇傾向が強まる可能性がある。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年10月末TTS相場。
成牛と畜頭数、過去4年間で最大を記録
MLAによると、2024年10月の週間成牛と畜頭数は、同月第4週時点で14万5337頭と過去4年間で最大となった(図2)。中でもQLD州は、20年1月以降で最大となる7万7467頭(全体の53.3%)を記録し、豪州全体のと畜頭数をけん引した。この要因としては堅調な輸出が挙げられ、MLAの見通しでは、と畜頭数は年内まで好調を維持すると予想している。
牛肉輸出量は堅調に推移、中国・韓国向け牛肉にセーフガードが発動
豪州農林水産省(DAFF)によると、2024年9月の牛肉輸出量は11万4046トン(前年同月比15.5%増)とかなり大きく増加し、24年7月、8月に続いて高水準を維持している(表)。
24年の累計(1〜9月)で輸出先別に見ると、米国、日本向けが好調を維持しており、特に米国向けは前年同期比66.8%増と大幅に増加した。一部報道によると、米国東海岸での労使交渉を巡る港湾労働者のストライキが見込まれたことで、米国の輸入業者が一定の備蓄を確保するため9月の輸入量を増やす傾向があったことが一因とされている。
一方で、中国向けは、中国経済の減速により24年の累計(1〜9月)で前年同期比9.6%減と減少傾向で推移しているが、9月の輸出量は前月(8月)と比較すると6.7%増と盛り返している。これは、豪州産牛肉に対する中国のセーフガード措置
(注2)発動を危惧した駆け込み輸入であったと考えられる。実際に9月末時点でセーフガードは発動しており、12月末まで豪州産牛肉に対し12〜25%の関税が課されることとなる。また、韓国向けも同様に10月末時点でセーフガード
(注3)が発動しており、これらの影響により、年内の通関が見込まれる11月半ばまで輸出量は鈍化の可能性があると予想されている。
(注2)海外情報「豪州牛肉に特別セーフガード発動(中国)」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002506.html)をご参照ください。
(注3)海外情報「韓豪FTAは2014年内に発効予定、豪州牛肉産業に恩恵」(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_001150.html)をご参照ください。
(調査情報部 国際調査グループ)