24年8月の生乳出荷量、前年同月比0.9%減
欧州委員会によると、2024年8月の生乳出荷量(EU27カ国)は、1202万1000トン(前年同月比0.9%減)と2カ月連続で前年同月をわずかに下回った(図1、表)。主要生産国別に見ると、フランス(同0.8%増)とポーランド(同3.5%増)はいずれも前年同月を上回った一方、その他の主要生産国では前年同月を下回った。
米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)によると、EU加盟国の多くの地域で7月と8月の気温が平年を上回ったことに加え、中欧北部全域にわたるブルータング
(注1)の発生や季節的な動向により生乳出荷量が減少しているとされる。
(注1)牛、羊、ヤギなどの反すう動物で発生するウイルス性の感染症。ウイルスは吸血昆虫によって媒介され、接触感染はない。感染すると、発熱、目やにや鼻水の漏水、口および鼻腔内に潰瘍(かいよう)ができるなどの症状がある。乳牛への感染により、泌乳量が減少するという。
24年9月の生乳取引価格、前年同月比9.4%高
欧州委員会によると、2024年9月の生乳取引価格(EU27カ国の平均)は、100キログラム当たり47.45ユーロ(1キログラム当たり79.8円:1ユーロ=168.23円
(注2)、前年同月比9.4%高)と5カ月連続で前年同月を上回った(図2)。前月比では、バターを中心とした乳製品価格が横ばいになったことに連動して0.1%の上昇にとどまったが、8月の生乳出荷量の減少が生乳取引価格を下支えしているとみられる。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年10月末TTS相場。
24年10月の乳製品価格、粉乳は低下もバターは高止まり
欧州委員会によると、2024年10月20日の週の乳製品価格(EU27カ国の平均)は、脱脂粉乳が100キログラム当たり250ユーロ(1キログラム当たり421円、前年同期比1.8%安)と前年同期をわずかに下回ったものの、全粉乳が同410ユーロ(同690円、同17.7%高)、チーズが同415ユーロ(同698円、同9.9%高)、ホエイパウダーが同90ユーロ(同151円、同11.8%高)といずれも前年同期を上回った(図3)。
中でもバターは、同786ユーロ(同1322円、同62.5%高)と前週から低下したものの、依然として前年同期を大幅に上回っている。USDA/AMSによると、バターの需要は依然として強く、生乳出荷量の減少などから在庫が不足しており、また、クリーム価格の高騰から、バターに仕向けられる生乳が減少していることが価格上昇の要因とされている。一方、全粉乳は、依然として輸出競争力が弱く、輸出需要は限定的とされている。
(調査情報部 渡辺 淳一)