24年1〜9月の生乳生産量、悪天候や経済の混乱などにより減少
アルゼンチン経済省によると、2024年1〜9月の生乳生産量は751万5900キロリットル(前年同期比9.5%減)と前年同期をかなりの程度下回った(図1)。これは、主要生産地において年初を中心に干ばつによる降水量不足から牧草の生育状況が悪化したことや、23年12月の新政権発足後も、インフレ状況の継続などで同国経済が混乱し、生産者の経営収支が悪化したことなどが要因とされる。その後の生乳生産量は回復基調で推移したものの、直近の状況を見ると、主要生産地であるパンパ北部地域では降水量不足の状況にあり、生乳生産への影響が懸念されている。
近年の生乳生産量を見ると、20〜21年は良好な天候に恵まれたことや堅調な乳製品需要を背景とした生産者の増産意欲の高まりから、2年連続での増産、22年は前年並みとなった。23年の生乳生産量は、干ばつや不安定な経済状況を反映して1132万6000キロリットル(前年比2.0%減)と前年をわずかに下回った。
24年1〜9月のチーズ輸出量は引き続き増加傾向で推移
2024年1〜9月の主要乳製品輸出量は、全粉乳(前年同期比19.5%増)およびチーズ(同24.0%増)が前年同期を大幅に上回る一方、バター(同30.9%減)は大幅に下回った(表1)。また、最大の輸出品目である全粉乳は、輸出先第1位のブラジル向けが4万8063トン(同0.2%減)、これに続くアルジェリア向けが2万4495トン(同69.9%増)と、この2カ国で全体の94.5%を占めた(表2)。アルジェリア向けは、23年にニュージーランドとの競合などにより大幅に減少したが、24年は回復基調で推移している。また、チーズは、モッツァレラチーズやセミハードチーズを中心に20年以降増加傾向で推移している。最大の輸出先であるブラジル向けが3万8096トン(同50.3%増)、これに続くチリ向けが1万2037トン(同9.8%増)と、この2カ国で全体の89.5%を占めた。
23年の主要乳製品輸出量は、チーズ(前年比12.3%増)およびホエイ(同4.7%増)が増加する一方、全粉乳(同27.6%減)およびバター(同51.8%減)が減少した。チーズは4年連続で増加し、直近5年間で最大の輸出量を記録している。
生産者乳価は引き続き上昇し、高値で推移
アルゼンチン経済省によると、2024年9月の生産者乳価は、1リットル当たり426.20ペソ(68円:1ペソ=0.16円
(注)、前年同月比260.1%高)と同約3.6倍になった(図2)。生産者乳価は18年ごろから上昇傾向となり、23年後半からこの傾向が一層顕著となった。これは、近年のアルゼンチンでの、高水準のインフレ率(21年:年50.9%、22年:同94.8%、23年:同211.4%)を背景としたものである。23年12月の新政権が発足後、積極的な経済改革が行われ、インフレ率は沈静化してきているものの、依然として年ベースでは高水準となっており、生産者乳価格に影響を及ぼしているとみられる。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年10月末TTS相場および現地参考為替相場(Selling)。
(調査情報部 井田 俊二)