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海外需給【牛肉/豪州】畜産の情報 2025年1月号

輸出増や牛群再構築の完了に伴い、牛肉需給関連指標はいずれも高水準

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24年11月の肉牛価格、過去5カ年を下回るも横ばいで推移
 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、豪州の肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、直近12月1日時点で1キログラム当たり636豪セント(636円:1豪ドル=100.04円(注1))と過去5カ年平均を下回るも横ばいで推移した(図1)。MLAは、牛群再構築が完了したことで牛の供給が安定したことに加え、加工処理能力の拡大や輸出需要の高まりにより、2024年の価格は年間を通じて安定的に推移したと分析している。豪州気象局(BOM)による24年12月〜25年2月の降水量の見通しでは、主要肉用牛生産地域であるクイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州で平均を上回る降雨が予想され、気温も平均を上回る可能性が非常に高いとされている(図2)。このため、これらの天候要因を背景とした牧草確保の見通しが高まったことで、EYCI価格も連動して上昇する可能性がある。
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年11月末TTS相場。
 




 
24年7〜9月の牛肉生産量は過去最高、成牛と畜頭数も過去最高水準
 豪州統計局(ABS)が2024年11月に公表した統計によると、24年7〜9月期の牛のと畜頭数は224万1200頭(前年同期比5.6%増)と、大規模な干ばつを経験した15年第2四半期以降で最大の数値を記録した(図3)。また、牛肉生産量も過去最高となる69万694トン(同6.6%増)となった。
 と畜頭数の増加についてMLAは、堅調な輸出需要や牛群が縮小局面であることを要因に挙げている。今後の牛飼養頭数増減の指標とされる雌牛のと畜頭数割合(FSR)を見ると、23年6月以降、牛群が減少に向かう分岐点とされる47%を超えている(図4)。FSRに対する考察としてMLAは、価格の低迷や干ばつなど気象条件による若齢牛の淘汰とうたではなく、牛群再構築を経て経産牛が適切に淘汰されている結果であると分析している。
 



 
 
24年10月の牛肉輸出量、米国向けが牽引けんいんし単月として過去最高
 豪州農林水産省(DAFF)によると、2024年10月の牛肉輸出量は13万48トン(前年同月比23.7%増)と大幅に増加し、単月輸出量として過去最高を更新した(表)。また、24年の累計(1〜10月)でも108万6932トン(前年同期比24.4%増)と過去最高で推移しており、残り2カ月で通年の記録である123万トンを超えることが確実視されている。
 輸出先別に見ると、米国、韓国、東南アジア向けが好調を維持しており、特に米国向けは、同国が干ばつ後の牛群再構築に入っていた14年9月以来、過去2番目に多い4万5338トン(前年同月比64.2%増)を記録した。韓国向けは、過去4番目の輸出量となる1万9733トン(同12.7%増)となった。これは10月24日に発動したセーフガードを見越した駆け込み輸入が要因の一つとされており、今後、年内の輸出量は鈍化すると見込まれている。また、東南アジア向けは、インドネシアの需要増が牽引し、1万8909トン(同69.9%増)を記録した。
 今後の輸出についてMLAは、米国産牛肉輸出の減少に加え、ブラジル産牛肉価格の上昇(注2)から、引き続き豪州の輸出業者が恩恵を受ける可能性が高いと分析している。
 
(注2)海外情報「24年の牛肉生産量は3年連続の増加で過去最大の見込み」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_003413.html)をご参照ください。

 
(調査情報部 国際調査グループ)