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海外需給【牛乳・乳製品/米国】畜産の情報 2025年1月号

ラテンアメリカ地域や東南アジアからの需要増が乳製品輸出を牽引

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乳価は堅調に推移し、酪農マージンは大幅に上昇
 米国農務省農場サービス局(USDA/FSA)によると、2024年10月の全米平均総合乳価は、生乳100ポンド当たり25.2米ドル(1キログラム当たり84円:1米ドル=151.74円(注1)、同16.7%高)と大幅に上昇した(図1)。また、飼料価格の下落も相まって酪農マージン(注2)も同15.17米ドル(同50円、同約1.6倍)と大幅に上昇している。
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2024年11月末TTS相場。
(注2)酪農家のセーフティーネット制度である酪農マージン保障プログラム(DMC)で算定される全米平均総合乳価と飼料費の差額としての収益。DMCでは、酪農マージンが発動基準を下回った場合、発動される。
 


 
24年10月の生乳生産量は前年同月比0.2%増
 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)によると、2024年10月の乳用経産牛飼養頭数は937万頭(前年同月比0.1%増)となった。また、 同月の生乳生産量は、847万8000トン(同0.2%増)と前年並みとなった(図2)。主要生産州の状況を見ると、テキサス州は飼養頭数の増加により同8.8%増とかなりの程度増加し、中西部ウィスコンシン州では同0.1%減と前年並みとなっている。一方、最大の生産量を誇るカリフォルニア州は乳牛への高原性鳥インフルエンザ(HPAI)感染の影響により同3.8%減とやや落ち込んでおり、州により生産状況は大きく異なっている。
 24年の生乳生産量についてUSDAは、前月予測から9万トン引き上げ、1億251万トン(前年比0.2%減)と見込んでいる。

 
24年9月の乳製品輸出量は多くの品目で前年同月を上回る
 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2024年9月の乳製品輸出量は、乳脂肪分ベースで前年同月比14.7%増とかなり大きく増加し、無脂乳固形分ベースで同6.8%増とかなりの程度増加した。
 品目別に見ると、脱脂粉乳、チーズ、ホエイなど多くの製品で前年同月を上回っている(表)。脱脂粉乳は主要輸出先であるメキシコや東南アジア諸国(フィリピンやシンガポール、マレーシアなど)からの需要増により、同15.6%増とかなり大きく増加した。チーズはメキシコやチリ、コロンビアといったラテンアメリカ地域からの需要増により同6.8%増とかなりの程度増加した。現地報道によると、メキシコではチーズの消費量が伸びており、特にピザに用いられる米国産シュレッドチーズの需要が増加しているとされている。
 24年の乳製品輸出量についてUSDAは、乳脂肪ベースで前年比10.5%増、無脂乳固形分ベースは供給減などから同0.8%減を見込んでいる。


 
 
(調査情報部 伊藤 瑞基)