24年12月の肉牛価格、牧草肥育農家の需要増により上昇傾向
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、豪州の肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、直近12月22日時点で1キログラム当たり668豪セント(671円:1豪ドル=100.5円(注1))と12月に入り上昇傾向で推移している(図1)。上昇の要因として、肉用牛主産地であるクイーンズランド(QLD)州、ニューサウスウェールズ(NSW)州で広範囲にわたって降雨があり、牧草の生育予測が上向いたことで、短期的に牧草肥育農家の需要が高まったためとされている。民間会社Cibolabsが提供している、牧草の生育状況の指標となる衛星画像データを見ると、QLD州とNSW州の多くの地域で草地の裸地率が20%未満となっており、降雨によって牧草の成長が進んでいることが確認できる(図2)。一方で、豪州農業系金融機関ルーラルバンクは、2025初頭には乾燥した気候条件に戻ることで、生産者の大半が牛群の整理を進め、供給が需要を上回ることにより市場価格は下落すると予測している。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年12月末TTS相場。
24年12月の成牛と畜頭数、引き続き高水準で推移
2024年12月の週当たりの成牛と畜頭数は、おおむね横ばいで推移している(図3)。同月第2週は14万733頭と前週に比べて若干下落したものの、引き続き高水準を維持している。MLAによると、24年(1〜12月)の平均と畜頭数は過去5年平均を16%上回っているとされる。その要因としてMLAは、輸出市場からの好調な牛肉需要に加え、太平洋豪州労働力移動計画(PALM:Pacific Australia Labour Mobility)(注2)の推進やその他の労働力確保の取り組みにより、国内の食肉加工能力が大幅に拡大したことを挙げている。
24年11月の牛肉輸出量、若干鈍化するも年間記録を更新
豪州農林水産省(DAFF)によると、2024年11月の牛肉輸出量は、前月比では若干減少したものの、引き続き米国向けがけん引し、11万8878トン(前年同月比26.7%増)と大幅に増加した(表)。
また、24年の累計(1〜11月)でも、121万6176トン(前年同期比24.6%増)と引き続き過去最高の水準で推移している。
輸出先別に見ると、米国向けが最も多く、3万5026トン(前年同月比79.3%増)を記録した。現地報道によると、トランプ次期大統領の当選以降、豪ドルの対米ドル相場は下落しており、輸出業者にとって好条件が整っているとされている。実際に12月の取引では、米国向け牛肉の主要な形態である加工用牛肉(90CL:赤身率90%のひき肉用)は、現地通貨建てで史上最高値となる1キログラム当たり10豪ドル(1005円)を記録しており、米国市場での豪州産需要の高まりを示している。
また、東南アジア向けは、2024年は、主要な成長市場となっており、1万5890トン(同43.6%増)と大幅に増加した。その中でもインドネシア向けは大きく伸びて9926トン(同49.6%増)を記録し、第5位の輸出先となっている。同国向けは、従来は生体牛輸出による供給体系が主であったが、現在は生体牛輸出とともに牛肉の輸出量も増えており、今後のさらなる成長が見込まれている。
MLAは、今年の歴史的な輸出増について、米国内の牛肉供給が不足していることが主な要因としつつ、これまで実施してきたグローバルなマーケティング活動、ターゲットを絞った消費者向けプロモーションによって、国際市場で豪州牛肉への信頼感が醸成されていることも要因の一つと分析している。2024年、MLAは香港に拠点を置き、グレーターベイエリア(注3)における新たなビジネス構築のための体制を整えており、今後もアジア地域でのマーケティング活動に力を入れていくとみられる。
(注3)中国の南部に位置し、広州の九つの都市、香港、マカオを含む経済圏。
(調査情報部 国際調査グループ)