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海外需給【牛肉/ブラジル】畜産の情報 2025年2月号

24年の牛肉生産量、輸出量ともに前年を大幅に上回り推移

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24年1〜9月の牛と畜頭数および牛肉生産量はいずれも前年同期比2割増
 ブラジル地理統計院(IBGE)による四半期ごとの公表資料によると、2024年1〜9月の牛と畜頭数は2969万9000頭(前年同期比19.1%増)、牛肉生産量は773万7000トン(同18.5%増)といずれも前年同期を大幅に上回った(図1)。これは、19年末から21年にかけて雌牛を多く保留したことから子牛頭数が増え、また、子牛価格が低水準にあることから、肉用牛生産者による雌牛出荷傾向が強まったことなどが要因とみられる。さらに、国内外の牛肉需要が堅調であることも、と畜頭数増加の追い風となった。特に同年7月のと畜頭数は359万2000頭(前年同月比22.6%増)と、1997年に統計を開始してから単月で最大となった。
 

 
24年1〜11月の牛肉輸出量はレアル安の影響などにより前年同期比30.4%増
 ブラジル開発商工サービス省貿易局(SECEX)によると、2024年1〜11月の牛肉輸出量は、234万3530トン(前年同期比30.4%増)と大幅に増加した(表)。これは、生産コストの低下や米ドルに対してレアル安で推移する為替相場の影響により同国産牛肉の国際競争力が高まったことなどが要因とみられる。特に24年10月は27万332トンと、単月としては過去最大の牛肉輸出量となった(図2)。一方、同年1〜11月の牛肉輸出単価は1トン当たり4546米ドル(72万3632円、1米ドル=159.18円(注)、同4.4%安)とやや低下した。
 輸出先別に見ると、最大の中国向けは120万8722トン(同12.0%増)とかなり大きく増加した。前年の23年2月にブラジル北部パラー州で非定型BSEに感染した牛が確認され、同国向け輸出が1カ月間(2月23日〜3月22日)停止し、同年の輸出量に影響したことが、24年の輸出量の増加につながっている。ただし、輸出量全体に占める中国向けの割合は51.6%であり、前年同期(60.1%)から8.5ポイント低下した。これに次ぐ米国向けは、5月以降、前年同月を大幅に上回る水準で輸出され16万9586トン(同2.1倍)、また、アラブ首長国連邦(UAE)向けは12万5836トン(同2.0倍)といずれも倍増した。このほか、フィリピン、ロシア、サウジアラビア向けが大幅に増加している。



 
 
24年肥育牛価格は堅調な海外需要により、8月下旬以降急上昇
 サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、2024年12月23日時点の肥育牛価格は1キログラム当たり20.97レアル(539円:1レアル=25.71円(注)、前年同期比24.9%高)となった(図3)。24年の肥育牛価格は、当初牛肉供給量が高水準で推移したことなどから23年に続き下落傾向で推移したが、同年6月7日の同14.35レアル(369円)を底に上昇傾向に転じ、8月下旬以降急上昇した。これは、海外からの需要が引き続き堅調であることや、生産量の3分の2が仕向けられる国内市場についても、消費者の可処分所得の増加などに伴いある程度の需要を確保できる状況にあるためとみられる。
 なお、肥育牛価格は、急激な価格上昇の反動で12月に入り1割程度急落したが、依然高水準にある。ブラジルでは、25年からと畜対象頭数の減少局面に転換するとされており、当面、肥育牛価格は高値で推移するとみられている。
 
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2024年12月末TTS相場および現地参考為替相場(Selling)。
 


 
(調査情報部 井田 俊二)