まずは、どのような鍋メニューに注目が集まっているのかを見ていきましょう。ぐるなび掲載店舗に登録されている鍋料理のデータから、直近12カ月で取扱指数(注)が上昇したメニューを、増加率順にランキングで紹介します。
ランキングによると、上位20件のうち半数以上を占める13件が和風系の鍋メニューとなっており、さらに10件が肉系の具材を使っています(表1)。ヘルシーなイメージがある鍋メニューですが、ガッツリとお腹を満たしてくれる肉系具材、そして濃い目の味付けが人気のようです。また、今年のトレンド鍋®に「新感覚すき焼き」が選出されたポイントとして、次の2点が挙げられます。
(注)指定キーワードについて、特定時点の全店舗数における取扱店店舗数の割合を表す数値。特定時点で1000店舗当たり何店舗存在するかという指標。
(1)国境を越えた高い認知度と顕著な人気
ぐるなびが独自に調査したアンケートでは、「すき焼きがとても好き・好き」と答えた人は、80%以上でした(図1)。また、今回選出した「新感覚すき焼き」についても、「食べてみたい・機会があれば食べてみたい」と答えた人がほとんどという結果になりました。鍋料理は伝統的な日本料理だからこそ知名度も高く、年齢に関係なく老若男女から好かれていることがわかります。
(2)インバウンド回復による国産高級食材の需要
すき焼きは、海外でも「SUKIYAKI」として長年親しまれており、「楽天ぐるなび外国語版(https://gurunavi.com/)」におけるページビュー数(閲覧数)では、同じく和牛肉が使われることが多い「しゃぶしゃぶ」と比較して約2.5倍と大幅に上回っています(図2)。
さらに、海外における昨今の輸入規制と円安の影響も多大で、訪日外国人による日本国内の高級食材の需要も高まっています。インバウンド需要の回復に伴い、その知名度と、この高級食材の需要を満たす料理として、和牛肉を使ったメニュー「SUKIYAKI」の注目度も上がっていると言えます。
(3)「新感覚」に求められること
「新感覚すき焼き」とは、「卵で食べる」「割下を使う」といった従来のすき焼きの特徴を生かしつつ、「食材や割下などに工夫を凝らし、さまざまなスタイルで楽しむすき焼き」と定義しています。多様化する食へのニーズ嗜好に合わせて新たな形に進化させることで、日本人のみならず、訪日外国人も、伝統的な日本の鍋料理である「すき焼き」の新たな魅力を発見することができます。
ぐるなびの独自アンケートによると、期待する“新感覚”の上位三つは、
1位「洋風でおしゃれ」(26.3%)
2位「エキゾチックで異国情緒あふれる」(18.3%)
3位「ヘルシーで健康的」(17.1%)
が占めており、特徴として求められています(表2)。
また、味付けとしては、全体的にピリ辛、濃厚、コクがあるなど、濃い目の味付けが期待されているようです。これらの“新感覚”要素を含めた、ぐるなび発の「新感覚すき焼き」メニューの一例を紹介します。
ア ヨーグルト卵で食べる黒毛和牛の燻製すき焼き
「生卵で食べるスタイル」や「甘辛い割下」といった従来のすき焼きのイメージに新たなエッセンスを加え、“新感覚”にアップデートしました(写真1)。燻製醤油を加えた、燻された香りが特徴の割下に、うま味あふれる黒毛和牛の肩ロース肉を組み合わせました。
ポイントは卵で、「新感覚すき焼き」のイメージとして上位だった「ヘルシーで健康的」にアレンジするため、ヨーグルトと生黒胡椒を加えました。酸味がアクセントとなりおいしさが倍増する新感覚のすき焼きです。
イ とろけるオムレツのトマトすき焼き
同じく「新感覚すき焼き」のイメージとして1位だった「洋風でおしゃれ」なすき焼きは、生卵で食べるのが定番なすき焼きを、オムレツでアレンジしたメニューです。卵が一面に覆われたオムライスのような見た目で、半日じっくり煮込んだとろける豚肩ロース肉とトマトのほどよい酸味がクセになる、和洋折衷の新感覚を表現しています。〆には、ライスコロッケをお鍋に入れ、煮詰まったスープをかけて崩し、リゾット風にして食べるのがおすすめです。