25年2月の若齢牛価格、今後は天候回復から上昇の見込み
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、直近2025年2月26日時点で1キログラム当たり653豪セント(622円:1豪ドル=95.23円(注))となっている(図1)。主産地を中心に高温乾燥が続いたことで、一部の生産者が牛の出荷を早めたことから牛の供給量が増え、1月下旬から2月初旬にかけて同650豪セント(619円)を下回った。その後は降雨による天候の回復も影響し、EYCI価格はやや上向きで推移している。
複数の農業系アナリストの見通しでは、天候の回復に伴い市場への牛供給量が減ることから、今後のEYCI価格は上昇傾向で推移するとしている。ただし、EYCI価格を支えている牧草肥育農家の大半はすでに牛群の再構築を完了していることから、上昇は小幅と予測している。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年2月末TTS相場。
成牛と畜頭数および牛肉生産量は大幅増、牛群の縮小傾向は継続
豪州統計局(ABS)が2025年2月に公表した統計によると、24年第4四半期(10〜12月)の牛と畜頭数は213万頭(前年同期比15.4%増)、牛肉生産量は66万2827トン(同14.8%増)と、いずれもかなり大きく増加している(図2)。と畜頭数の増加により、雌牛のと畜頭数割合(FSR)は、繁殖雌牛の出荷による頭数削減が進んでいる指標である47%を7期連続で超えている状況にある(図3)。このため、今後、豪州の牛群縮小に注視する必要がある。
現地報道によると、と畜頭数、牛肉生産量が大きく増加する中で、豪州の食肉処理加工業者は処理能力の拡大に苦戦していると報じられている。肉牛主産地のクイーンズランド州にある豪州最大のJBS社のディンモア工場では、1日当たり3300頭の肉牛処理を予定していたが、人員不足により同2900頭にとどまっているとされている。
2025年1月の牛肉輸出量、季節的な減少を示すも前年同月を上回る
豪州農林水産省(DAFF)によると、2025年1月の牛肉輸出量は、8万1049トン(前年同月比7.2%増)とかなりの程度増加した(表)。
輸出先別に見ると、米国向けは2万4685トン(同21.6%増)と大幅に増加しており、米国では、前年から豪州産牛肉への堅調な需要が続いている。MLAによると、25年も米国向けが輸出をけん引すると予測している。また、24年に交渉が妥結し、25年発効予定のアラブ首長国連邦(UAE)との自由貿易協定(CEPA:Australia-UAE Comprehensive Economic Partnership Agreement)により、冷凍牛肉に対する5%の輸入関税が撤廃されることから、さらなる輸出拡大が見込まれるとされている。
(調査情報部 国際調査グループ)