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海外需給【牛肉/アルゼンチン】畜産の情報 2025年4月号

24年の牛肉輸出量は引き続き好調で3年連続の増加

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24年牛肉生産量は前年比3.3%減と3年ぶりに減少
 アルゼンチン経済省によると、2024年の牛肉生産量は317万8000トン(前年比3.3%減)と前年をやや下回り、3年ぶりの減少となった(図1)。これは、主要肉牛生産地域などが23年に70年ぶりといわれる厳しい干ばつに見舞われたことで、生産者からと畜向け出荷頭数が増加した結果、24年にはと畜対象となる個体数が減少したことに加え、天候の回復に伴う飼養環境の改善から、肉用牛生産者による牛の保留傾向が強まったためとみられる。また、同年のと畜頭数は、1392万9000頭(同4.0%減)となった。ただし、このと畜頭数は直近10年間で見ると、23年、20年に次ぐ多さとなり、2年連続で高い水準となった。と畜の内訳を見ると、全体に占める雌牛の比率は48.5%と23年に続く高水準になっており、牛群の縮小につながったとみられる。
 25年1月の牛肉生産量は26万4000トン(前年同月比1.5%減)となった。

 
24年の牛肉輸出量、中国向けが全体の8割弱を占める
 アルゼンチン国家統計院(INDEC)によると、2024年の牛肉輸出量は75万6330トン(前年比12.3%増)と前年をかなり大きく上回り、3年連続で増加し直近20年間で最大となった(表)。堅調な輸出需要に加え、24年8月から牛肉に対する輸出税が9%から6.75%へと25%引き下げられたことなどが増加につながったとみられる。一方、輸出単価は1トン当たり3911米ドル(58万9270円:1米ドル=150.67円(注1)、同3.3%安)と前年をやや下回った。
 輸出量全体の8割弱を占める中国向けは56万9108トン(同6.0%増)とかなりの程度増加したが、輸出単価は同2788米ドル(42万68円、同10.7%安)と前年をかなりの程度下回った。これは、中国経済の動向が不透明な状況下で同国の牛肉消費が停滞していること、さらに、豪州産牛肉などとの競合なども取引価格の下落につながったとみられる。このような中、アルゼンチンの牛肉業界は、中国向けの輸出依存度が高い状況に警戒を強めており、輸出市場の多様化を模索している。他の主要輸出先であるイスラエル、米国、チリ向けや、23年に輸出が再開されたメキシコ向けは、いずれも前年を大幅に上回った。
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年2月末のTTS相場。

 
24年10月の肥育牛出荷価格、前年同月比約2.2倍に上昇
 アルゼンチンの肉用牛相対取引の指標となるアグロガナデロ家畜市場の2024年10月の肥育牛出荷価格は、1キログラム当たり1900.88ペソ(266円:1ペソ=0.14円(注2))と、前年同月比約2.2倍となった(図2)。これは、不安定な経済状況を反映した急激なインフレに加え、23年12月12日に実施された50%を超える公式為替レートの切り下げなどの影響とみられる。
 アルゼンチンでは23年12月10日に新政権が発足し、インフレや債務など同国経済が抱える諸問題の原因である慢性的な財政赤字問題の解決に着手した。
 この結果、24年12月の消費者物価指数(CPI)は117.8%(年率)となり、23年の上昇率(211.4%)からは大幅に改善したものの、国内消費者の購買力は依然低迷している。ロサリオ商品取引所によると、24年の年間1人当たり牛肉消費量は約45キログラムで、過去110年で最も少ないと予想されている。
 
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年2月末のTTS相場および現地参考為替相場(Selling)。
 
 
(調査情報部 井田 俊二)