24年の鶏肉生産量は、堅調な需要を背景に引き続き増加傾向で推移
ブラジル地理統計院(IBGE)によると、2024年1〜9月の鶏肉生産量は1027万8000トン(前年同期比1.5%増)と前年同期をわずかに上回った(図1)。これは、多くの国で高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)が発生したことにより鶏肉供給量に制約が生じたことや堅調な鶏肉需要を背景に鶏肉価格が高値で推移したことで、生産者の増産意欲につながったためとみられる。また、同期間の処理羽数は、48億3003万羽(同1.6%増)となった。
近年の鶏肉生産量を見ると、23年まで5年連続で増加している。サンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、同国の鶏肉生産量は、24年に続き25年も増加傾向で推移すると予測されている。
24年鶏肉輸出量は、中国向けが大幅減も前年比3.2%増
ブラジル開発商工サービス省貿易局(SECEX)によると、2024年の鶏肉輸出量は488万3458トン(前年比3.2%増)と前年をやや上回り、4年連続の増加となった(表、図2)。
輸出先別に見ると、最大の中国向けは56万1097トン(同17.8%減)と前年を大幅に下回った。これは、中国国内での鶏肉増産に向けた動きや消費者志向の変化のほか、24年7月17日、南部リオグランデドスル州の商業養鶏農家でニューカッスル病の発生が確認されたことで、8月中旬までの約1カ月間、ブラジルのすべての地域からの同国向け鶏肉輸出が停止されたことなどが影響したとみられる。一方、これに続くアラブ首長国連邦向けは45万3763トン(同3.4%増)、日本向けは43万7966トン(同2.3%増)といずれも前年を上回った。このほか、メキシコ向けは21万1649トン(同23.4%増)と前年を大幅に上回った。これは、メキシコ政府が国内のインフレおよび貧困対策として、ブラジルからの鶏肉および豚肉の輸入を無税とする措置を講じたためである。なお、この措置は25年まで延長されることとなった。
鶏肉卸売価格は24年10月以降、上昇傾向で推移
CEPEAによると、直近(2025年2月17日時点)のブラジルの鶏肉卸売価格は、1キログラム当たり8.40レアル(216円:1レアル=25.76円(注)、前年同期比11.7%高)となった(図3)。24年の鶏肉卸売価格は、年初から同7.0〜7.5レアル(180〜193円)の範囲内で推移していたが、10月末に上昇し、11月中旬以降は8.0レアル(206円)を超える水準で推移した。これは、国内での牛肉や豚肉価格の上昇により鶏肉の相対的な価格優位性が強まり、消費者の需要が比較的安価な鶏肉へ移行したことなどが影響したとみられる。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年2月末TTS相場および現地参考為替相場(Selling)。
(調査情報部 井田 俊二)