24年12月の生乳出荷量、前年同月比0.7%減
欧州委員会によると、2024年12月の生乳出荷量(EU27カ国)は1136万9000トン(前年同月比0.7%減)と前年同月をわずかに下回った(表1、図1)。主要生産国別に見ると、ポーランド(同3.8%増)、スペイン(同0.8%増)、デンマーク(同1.3%増)およびアイルランド(同30.1%増)が前年同月を上回る中で、ドイツ(同4.3%減)やフランス(同0.9%減)、オランダ(同0.6%減)などは、いずれも前年同月を下回った。また、24年の生乳出荷量を見ると、オランダが前年比1.7%減となり、主要生産国の中で最も減少幅が大きくなった。これは、環境規制の強化や政府の廃業支援による飼養頭数の減少に加え、家畜疾病などの影響もあるとみられている。
24年上半期(1〜6月)の生乳出荷量は、(1)比較的高い水準で安定した生乳取引価格(2)前年に比べて良好な気象条件−により前年同期を1.3%上回った。第3四半期(7〜9月)は(1)記録的な高温(2)環境規制の強化−により生乳出荷量が前年同期並み(同0.2%減)となったが、第4四半期(10〜12月)は(1)アイルランドの放牧環境の改善(2)生乳取引価格の上昇−により同0.6%増となった。これらの結果、24年の生乳出荷量は、前年比0.7%増と前年をわずかに上回った。
25年1月の生乳取引価格、9カ月連続で前年同月を上回る
欧州委員会によると、2025年1月の生乳取引価格(EU27カ国の平均)は、100キログラム当たり54.38ユーロ(1キログラム当たり85.43円:1ユーロ=157.10円(注)、前年同月比17.1%高)と9カ月連続で前年同月を上回った(図2)。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年2月末TTS相場。
25年2月のチーズ価格、前年同期比37.9%高と上昇が続く
欧州委員会によると、2025年2月23日の週の乳製品価格(EU27カ国の平均)は、脱脂粉乳は100キログラム当たり256ユーロ(1キログラム当たり402円、前年同期比0.9%高)、全粉乳は同434ユーロ(同682円、同19.4%高)と前年同期を上回った(図3)。また、バターは同720ユーロ(同1131円、同28.7%高)と前年同期を大幅に上回ったが、前月同期比では2.8%安とわずかに下落傾向にある。チーズは同498ユーロ(同782円、前年同期比37.9%高)、前月同期比でも3.8%高と上昇が続いている。
24年の主要乳製品輸出量、チーズを除き前年を下回る
欧州委員会によると、2024年のEU域外向けの乳製品輸出量は、チーズが138万6900トン(前年比0.1%増)と前年並みであった一方、バターが24万8200トン(同2.3%減)、脱脂粉乳が71万6900トン(同7.6%減)、全粉乳が20万7800トン(同20.1%減)といずれも前年を下回った(表2)。
バターの輸出量減少は(1)歴史的な価格高騰(2)生乳が主にチーズに仕向けられたことによる生産減−が影響したが、米国向けは、トランプ新政権誕生前の24年下期に前倒しとみられる輸出が増えたことで、6万3900トン(前年同期比41.2%増)と前年を大幅に上回った。チーズは日本向けが減少(同20.5%減)したが、米国向け輸出の増加(同12.1%増)により相殺された。現地報道によると、日本向け輸出減少の一因として、日豪FTAの関税率削減による豪州産チーズの輸入拡大の影響が挙げられている。
脱脂粉乳はアフリカや東南アジア向け輸出が総じて増加したが、中東や特に中国向けの減少が大きく、EU全体として輸出減となった。
(調査情報部 渡辺 淳一)