25年1月の国産トウモロコシ価格、前月からわずかに上昇
中国農業農村部は2月24日、「農産物需給動向分析月報(2025年1月)」を公表した。この中で、25年1月の国産トウモロコシ価格は前月からわずかに上昇した(図1)。直近のトウモロコシ需給を見ると、供給面では春節(旧正月)後の市場出回り量の減少から、全体的な供給量は縮小とされている。需要面では春節後に飼料および加工企業の工場が徐々に再開し、在庫補充に向けた需要が高まっているとされる。また、大手穀物企業による市場での継続的な購入や輸入量の減少など、価格上昇につながる政策的な取り組みもあり、短期的には安定を保ちながらもやや上昇傾向での推移が見込まれている。
輸入トウモロコシ価格を見ると、養豚主産地の中国南部向け飼料原料集積地となる広東省黄埔港到着(関税割当数量内:1%の関税+25%の追加関税)は、25年1月が1キログラム当たり2.16元(45円:1元=20.80円(注)、前月比2.9%高)とわずかに上昇した。また、同月の国産トウモロコシ価格(東北部産の同港到着価格)も同2.16元(45円、同0.9%高)とわずかに上昇したことで、輸入品と国産品の価格差はなくなった。
25年1月の国産大豆価格、前月同を維持
2025年1月の国産大豆価格は、前月同を維持した(図2)。直近の大豆需給を見ると、供給面では価格低迷から農家の売り控えにより市場出回り量は減少傾向とされる。需要面では取引業者の購入意欲は弱いながらも、国家備蓄在庫用の購入が現物市場価格を支え、価格の安定につながっているとされる。春節後は、末端需要の回復から加工企業の購入意欲が高まり、国家備蓄在庫用の購入も行われることで、当面の国産大豆価格は着実な上昇が見込まれている。
各地の価格動向を見ると、主産地である黒竜江省の食用向け国産大豆平均取引価格は、25年1月が1キログラム当たり3.78元(79円、前年同月比21.2%安)と前年同月を大幅に下回った。また、大豆の国内指標価格の一つとなる山東省の国産大豆価格は、同4.30元(89円、同18.2%安)と前年同月を大幅に下回った。同月の輸入大豆価格(山東省青島港引き渡し価格、課税後)が同3.74元(78円)となったことで、輸入と国産の価格差は前月の同0.64元(13円)から同0.56元(12円)に縮小した。
国際相場に影響する大豆の輸入量は、国際相場安などを背景に前年に比べて高い水準にある。24年(1〜12月)の輸入量は1億503万トン(前年比6.5%増)とかなりの程度増加した。輸入額は穀物価格の下落を受けて同10.8%減の528億4100万米ドル(7兆9616億円:1米ドル=150.67円(注))と報告されている。主な輸入先はブラジル(総輸入量の71.1%)、米国(同21.1%)、アルゼンチン(同3.9%)となり、トランプ新政権発足前の駆け込み輸入から、米国の割合が上昇した。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年2月末TTS相場。
2025年中央1号文件を発表、安定した穀物供給の保持が必要
中国共産党中央委員会と中国国務院は2025年2月23日、「2025年中央1号文件」(以下「中央1号文件」という)を発表した。この中央1号文件は、その年の最初に発出される最重要政策とされ、04年以降、「三農(農業、農村、農民)」の問題に対処したものとなっている。
今年の中央1号文件では、昨年に続き穀物や重要な農畜産物に焦点を当て、生産の安定と供給の確保を明確に指示している。
このうち、翌2月24日に国務院が開催した記者会見の席で、中国共産党で経済政策を統括する中央財経委員会弁公室の韓文秀副主任は、中央1号文件に記載の穀物に関して次の見解を示した。
・24年の穀物生産は過去最高を記録し、大豆の生産量も2000万トンを超えるなど、さまざまな農産物の供給が潤沢となり、社会的安定につながる重要な役割を果たしている。
・中心的な政策は明確であり、穀物生産は依然として天候要因に左右され、近年は異常気象などの自然災害が発生する中で、(豊作により)穀物価格がしばらく低迷しているからといって、穀物の増産が終わったなどと軽々しく言うことはできない。
・直接的な食料としての穀物需要は減っているが、食肉や卵、乳製品の生産・供給をより増やすためには多くの穀物が必要となっている。
・全体として、中国の穀物供給は需要を上回っておらず、依然として需給バランスの安定が厳しい状況にある。このため、引き続き国家の食糧安全保障の確保を第一に考え、需給をしっかりと把握し、安定した供給を保持することが必要。
・このためには、(1)単収と生産効率の改善(2)地域の状況に応じた科学技術や設備への支援強化(3)多様な食料供給システムの構築−が求められる。
(調査情報部 横田 徹)