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海外需給【牛肉/豪州】畜産の情報 2025年6月号

25年第1四半期の牛肉輸出量は歴史的な高水準を記録

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25年4月の若齢牛価格、供給不足懸念などから上昇
 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、直近2025年4月30日時点で1キログラム当たり725豪セント(674円:1豪ドル=92.96円(注))となり、4月は総じて上昇した(図1)。
 3月から4月にかけて主要肉牛生産地域であるクイーンズランド(QLD)州西部で発生した洪水では、約27万頭の牛が被害を受けたと推定されており、牛の供給不足への懸念からEYCIが強く反応し、4月第1週には前週平均から7.4%高となる同703豪セント(654円)を記録した。その後は、価格上昇に伴い生産者の出荷意欲が高まり、牛の出回り頭数が増加したため価格は安定して推移したが、複数の祝日と週末が重なった4月下旬の連休後、加工業者からの引き合いが高まり、直近では若干の上昇が見られた。
 今後の見通しについてMLAは、QLD州と同じく主要肉牛生産地域であるニューサウスウェールズ(NSW)州での潤沢な降雨により放牧環境が改善し、牧草肥育農家からの若齢牛の需要増が見込まれることで、需給のひっ迫傾向は続くと予想している。
 
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年4月末TTS相場。
 



 
25年4月後半のと畜頭数、連休による大幅減も需要は堅調
 2025年4月の週間成牛と畜頭数は高水準で推移しており、同月第2週は15万2180頭(前年同期比16.1%増)と、19年12月以来の15万頭超えを記録した(図2)。第3週以降は、複数の祝日と週末が重なり例年に比べて長期の連休となったことから、食肉処理加工施設の稼働率が低下し、と畜頭数は大きく下落した。一方で、引き続き需要は堅調を維持しており、現地報道によると、連休明けの食肉処理加工施設の予約の取り合いが起きているとされている。
 



 
25年第1四半期の牛肉輸出量、高水準を記録
 豪州農林水産省(DAFF)によると、2025年3月の牛肉輸出量は11万2423トン(前年同月比5.5%増)と増加した(表)。また、25年第1四半期(1〜3月)では31万974トン(前年同期比12.7%増)となり、第1四半期として過去最大の水準となった。
 3月の輸出量を輸出先別に見ると、米国向けは3万2282トン(同21.9%増)と大幅に増加した。MLAによる米国内の調査によると、4月の米国向け輸出も前年を上回る水準と報告されており、現時点で関税措置の影響は見られていない。現地報道によると、米国向けの加工用牛肉(90CL:赤身率90%のひき肉用)の輸出価格は、米国による追加関税措置後も変わっておらず、米国の輸入業者や小売業者が追加コストを負担しているとされている。
 また、中国向けは2万263トン(前年同月比22.9%増)と大幅に増加し、25年第1四半期(1〜3月)では、第1四半期として過去最高の5万6544トン(前年同期比22.0%増)を記録した。現地報道によると、同国が米国産牛肉に課した追加関税(2025年3月10日発効)の影響から、豪州産牛肉への需要が高まっていることが要因とされている。一方で、豪州の穀物肥育牛肉の生産能力は米国の代替として十分な供給量を確保できる水準にはなく、ブラジルも中国向け輸出を増やす方針を示していることから、今後も中国向けの増加が続くかは不透明との報道もある。
 



 
(調査情報部 国際調査グループ)