ナチュラルチーズを作るときに原料乳に加える微生物をチーズスターターといい、乳酸菌(注1)、カビ、酵母などがある。
このうち乳酸菌スターターは、チーズ製造において乳酸発酵を主目的とするもの(メインスターター)と、たんぱく質を分解するなどして特有の味と香りを付与する目的で併用するもの(補助スターター)がある。国内に流通する乳酸菌スターターのほとんどは、利便性と衛生面を考慮し、高濃度の生菌を凍結乾燥処理した粉末で、原料乳へ直接添加して使用するダイレクトバットセット(以下「DVS」という)(注2)として市販されている。
(注1)乳酸菌という名称は、細菌の生物学的な分類上の特定の菌種を指すものではなく、糖を代謝し、多量の乳酸を生成する細菌群の総称。発酵によって多量の乳酸を産生するだけでなく、比較的低いpH条件下でよく増殖する。これらの菌にとって、乳酸は発酵の最終産物であると同時に、それを作り出して環境を酸性に変えることで他の微生物の繁殖を抑え、自分自身の増殖に有利に導く役割を持つと考えられている。
乳酸菌は、自然界に広く存在する。チーズ、ヨーグルト、発酵ソーセージ、なれずしなどの動物性発酵食品や、味噌、醤油、漬け物、パンなどの植物性発酵食品にも存在する。また、ヒトの腸管内などにも存在しており、ヒト由来乳酸菌の一部は、整腸剤や健康機能性食品に利用されている。
(注2)Direct Vat Set。原料乳に直接投入可能な乳酸菌スターターの凍結乾燥菌体をいう。