25年6月若齢牛価格、下落傾向も春先には上昇の見込み
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2024/25年度(7月〜翌6月)の最高値となる734豪セント(708円:1豪ドル=96.50円(注1))を記録した5月末から下降気味で推移し、直近6月29日時点で1キログラム当たり712豪セント(687円)となった(図1)。
現地アナリストによると、牛価格の下落は初霜の到来による牧草肥育農家の導入意欲の低下を示しており、典型的な冬型のパターンに突入していると分析している。一方で、輸出向けをはじめとした牛肉需要は引き続き堅調であり、一部報道では、春先には、干ばつ後の全国的な牛群の再構築を背景に22〜23年に記録された歴史的な高水準(1000豪セント(965円)台)に再び達するという予測も立てられている。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年6月末TTS相場。
と畜頭数は高水準で推移するも、大幅な牛群の縮小は見られず
2025年6月の週間成牛と畜頭数は引き続き高水準で推移しており、6月第3週は15万3442頭(前年同期比7.8%増)と、過去5年間で最高値を記録した(図2)。米国向けをはじめとした輸出需要がけん引する形となっているが、現地では15万頭超えは労働力不足などの問題と相まって、国内の食肉加工処理能力の限界に迫っているとも推測されており、今後も増加傾向が続くかどうかは不透明となっている。
MLAは25年6月に肉牛農家意向調査(BPIS)(注2)の結果を公表した。と畜頭数が堅調に推移する中、牛群縮小の傾向について注目が集まっていたが、25年3月31日時点の牧草肥育牛頭数(子牛を除く)は2793万8755頭(前回調査比2.0%減)と、わずかな縮小にとどまった(表1)。また、今後1年間の生産意向は、約3割が頭数増、約5割が現状維持、約2割が頭数減を計画していることから、今後は牛群頭数の維持または増加が見込まれている。
(注2)MLAが2023年から実施している調査。牧草肥育農家を対象に、牛群の品種や月齢、生産者の牛群規模の増減に関する予定や出荷率、分娩率など、多岐にわたる項目を聞き取り、取りまとめている。
25年5月牛肉輸出量は過去最高を更新、関税措置の影響は見られず
豪州農林水産省(DAFF)によると、2025年5月の牛肉輸出量は12万9477トン(前年同月比13.7%増)とかなり大きく増加した(表2)。4月に引き続き、5月の数値としては過去最高を更新した。
5月の輸出量を輸出先別に見ると、特に米国、中国向けが顕著に増加した。米国向けは3万8299トン(同22.4%増)と大幅に増加し、現地報道では、米国の関税措置による影響が事実上ないことを示唆する結果となったと報じられている。また、中国向けも2万3877トン(同55.5%増)と国別で最大の伸びを記録した。MLAによると、特に穀物肥育牛肉の輸出増が顕著であり、米中貿易摩擦の影響により豪州産牛肉の注目が高まっているとされている。なお、すでに中豪FTAに基づくセーフガード発動基準である19万989トンは半分以上消化されており、例年より早く最恵国待遇関税(12%)が課される見込みである点は懸念材料の一つとなっている。
一方、米国や中国向けとは対照的に、日本向けは1万9803トン(同22.1%減)と大幅に減少した。現地アナリストは、中国へのアクセスが減少している米国の輸出業者が日本市場への売り込みを強化したことで、競合する豪州産牛肉が影響を受けていると分析している。
(調査情報部 国際調査グループ)