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海外需給【牛肉/アルゼンチン】畜産の情報 2025年8月号

25年1〜4月の牛肉生産量は前年同期並み、輸出量は大幅減

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25年1〜4月の牛肉生産量、と畜頭数は減少ながら前年同期並み
 アルゼンチン経済省によると、2025年1〜4月の牛と畜頭数は432万7000頭(前年同期比0.7%減)と前年同期をわずかに下回った。一方、牛肉生産量は1頭当たり枝肉重量の増加(同0.8%増)から、99万3000トン(同0.1%増)と前年同期並みとなった(図1)。と畜頭数の減少について、米国農務省(USDA)は、24年は厳しい干ばつに見舞われた中で、堅調な輸出需要も後押しして早期のと畜が進んだが、25年は干ばつが緩和し、肉用牛生産者による牛の保留傾向が強まっていることが要因としている。
 国家農畜産品衛生品質管理機構(SENASA)によると、24年12月31日現在の牛飼養頭数は5162万5000頭(前年比2.2%減)と前年をわずかに下回った。これは前述した干ばつの影響と考えられる。加えて、USDAによると、ラニーニャ現象による3年連続の干ばつが繁殖雌牛の分娩に悪影響を及ぼし、子牛の減少をもたらした。
 


 
25年4月の肥育牛(去勢)出荷価格、前年同月比約1.6倍に上昇
 同国の肉用牛相対取引の指標となるアグロガナデロ家畜市場の2025年4月の肥育牛(去勢)出荷価格は、1キログラム当たり2788.13ペソ(335円:1ペソ=0.12円(注1)、前年同月比58.1%高(約1.6倍))となった(図2)。前述のと畜数の減少に加え、国内需要が旺盛であることが肥育牛の出荷価格上昇に拍車をかけたものと考えられる。



 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年6月末のTTS相場および現地参考為替相場(Selling)。
 
25年1〜4月の牛肉輸出量は前年同期比25.4%減
 アルゼンチン国家統計院(INDEC)によると、2025年1〜4月の牛肉輸出量は19万2027トン(前年同期比25.4%減)と前年同期を大幅に下回った(表)。これは、米ドルに対するペソ高が進み、他の輸出国と比べると、輸入価格が上昇していることが一因とみられている。また、USDAによると、25年2月にアルゼンチンの大規模食肉加工施設で火災が発生したことも輸出に影響したとされており、今後数カ月はこの影響が続く可能性があるとみられている。
 一方、同期間の輸出単価は、1キログラム当たり4.90米ドル(714円:1米ドル=145.81円(注2)、同31.1%高)と大幅に上昇したため、輸出額(同2.2%減)はわずかな減少にとどまった。
 輸出先別に見ると、輸出量全体の7割弱を占める中国向けは12万9429トン(同36.1%減)と大幅に減少したが、輸出単価は同3.27米ドル(477円、同15.6%高)と前年同期をかなり大きく上回った。USDAは、中国はアルゼンチンの主要輸出先であり続けるとしながらも、輸出業者がより輸出単価の高い仕向け先に重点を移すにつれて、そのシェア(輸出割合)は徐々に低下する可能性があるとしている。また、政府と業界関係者は、東南アジアなど新たな市場開拓にも積極的に取り組んでいるとしている。
 
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年6月末TTS相場。
 



 
(調査情報部 原田 祥太)