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話題 畜産の情報 2025年9月号

令和7年10月17日開催! 「第15回ALL JAPANナチュラルチーズコンテスト」 〜国産ナチュラルチーズの展示試食会も併催〜

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一般社団法人中央酪農会議 業務部 調査役 阿南 恵美香

1 国産ナチュラルチーズをめぐる情勢

 ナチュラルチーズとは、動物の乳を乳酸菌や酵素の働きで固めて水分(ホエイ)を切ったものから得られる製品を指します。世界中には1000種類以上あるといわれており、それぞれ形や味に違いがあります。硬さによって(1)軟質(2)半硬質(3)硬質(4)超硬質―の四つのタイプに分類することができ、さらに「熟成させるもの」「熟成させないもの」というように細分化されます。また、乳酸菌や酵素が生きているため、時とともに味わいが変化します。なお、プロセスチーズは、ナチュラルチーズを加熱して溶かし加工したもので、乳酸菌や酵素の働きを止めることによって保存性を高め、味わいを一定にしています。
 わが国において、工場での本格的なチーズ製造が始まったのは昭和に入ってからで、一般家庭の食卓に上るようになったのは戦後になってからのことです。国産ナチュラルチーズの生産量は、全体として緩やかな増加傾向で推移しています(図1)。
 



 
 国産ナチュラルチーズの生産者についても、全国各地で年々増加しています(表1)。酪農家が牧場に併設するチーズ工房のほか、独立したチーズ工房もあり、自家牧場の生乳や地域の生乳を使って特色ある商品の製造販売を行うなど、創意・工夫にあふれる取り組みが展開されています。
 


 
 わが国では、口当たりが良く生乳の風味が楽しめるチーズや、比較的クセのないチーズが好まれる傾向にあり、多くの生産者がフレッシュタイプやハードタイプ、白カビタイプを中心にさまざまな種類のチーズを製造しています(図2)。


2 コンテストの概要

 一般社団法人中央酪農会議(以下「中央酪農会議」という)では、国産ナチュラルチーズの製造技術の向上、消費拡大などを目的に、平成9年度から隔年で「ALL JAPAN ナチュラルチーズコンテスト」を開催しています。本コンテストは、審査員が国産ナチュラルチーズを公正な評価で審査・表彰するというもので、開催主旨は以下の通りです。
 
<開催主旨>
1)日本人の嗜好しこうにあったチーズの製造や、わが国の気候風土にあった独自のナチュラルチー
   ズ文化を創造し、今後の生乳需要拡大を図る。
2)国産ナチュラルチーズに対する専門家によるアドバイスおよびユーザーからの意見などを
    聞く機会を設けることにより、国産ナチュラルチーズの製造技術向上を図る。
3)ユーザーに対し、国産ナチュラルチーズの紹介の場を設けることにより、販路拡大を図る。
 
出品者数・出品作品数は第1回の31者・78作品から回を重ねるごとに増加し、直近の第14回(令和5年度開催)では、過去最高の109者・248作品の出品がありました(表2)。
 



 
 審査員には、チーズ鑑評専門家、学術研究者、製造技術専門家、料理研究家など、多岐にわたり活躍されている方を迎え、出品された国産ナチュラルチーズの素晴らしさについて、外観、色調、組織、風味の各項目などにより公正に審査し、各賞を決定して表彰します。

3 第14回コンテストの開催内容と結果

 令和5年10月25〜26日にホテルメトロポリタンエドモント(東京都千代田区)にて開催した第14回コンテストでは、審査員長の山本博紀氏(北海道乳業株式会社取締役、製造部部長)をはじめとした14人の審査員で、計12部門の審査を行いました(表3、4)。
 




 
 非公開の一次審査、二次審査を経て、一般公開で最終審査を行い、上位3賞(農林水産大臣賞、農畜産業振興機構理事長賞、中央酪農会議会長賞)、審査員特別賞、金賞(6アイテム)、優秀賞(20アイテム)を選出しました(写真1)。
 さらに、生産者の新たな取り組みに話題性を持たせ、今後の取り組みの推進につなげていくことを狙いとしてトライアル部門を一新し、他の部門から独立して、製品コンセプトなどの内容も含めて審査を行い、ベスト・トライアル賞を選出することとしました。
 審査の結果、栄えある農林水産大臣賞は美瑛放牧酪農場(北海道上川郡美瑛町)の「フロマージュ・ド・美瑛」(写真2)、農畜産業振興機構理事長賞は三良坂フロマージュ(広島県三次市)の「アカショウビン」(写真3)、中央酪農会議会長賞は丹波チーズ工房(兵庫県丹波市)の「丹波ブルー」(写真4)、審査員特別賞はCHEESEDOM(北海道久遠郡せたな町)の「瀬棚-SETANA」(写真5)、ベスト・トライアル賞はCHEESE STAND(東京都渋谷区)の「いちじくブッラータ」(写真6)がそれぞれ選出されました。

















  
 農林水産大臣賞を受賞した美瑛放牧酪農場の「フロマージュ・ド・美瑛」は、夏の青草を食べた牛のミルクで作られた長期熟成の大型チーズです。審査員の一人であるイタリア料理店「Piatto Suzuki」のオーナーシェフ・鈴木 弥平氏は、「ヨーロッパのチーズと間違えるほどの形と色に惹きつけられた。うまく熟成すると現れるアミノ酸の結晶が口の中でジャリっと感じられ、うまみが広がる。日本から世界に発信できるチーズだ」と評しました。
 表彰式の最後に、山本審査員長は、「チーズのレベルが非常に高く感心している。私がチーズを始めた35年前は65工房程度しかなかったと記憶しているが、今は全国で350工房を超えた。チーズ工房の横のつながりも強まった。コンテストや展示会などで情報交換しながら切磋琢磨し、レベルを上げ、世界に通じるレベルに到達している。今回出品されたチーズは甲乙つけがたい良いチーズばかりだった。トライアル部門でもわれわれの想像を超えるものがたくさんあり、非常に勉強になった。工房の方々には向上心を忘れず、これからも良いチーズを作ってほしい」と総括しました。
 審査・表彰式終了後は、全国のチーズ工房が一堂に会する展示試食会を4年ぶりに開催しました(写真7)。一般消費者や小売・流通関係者など約600人が来場し、国産ナチュラルチーズの試食や全国各地の生産者との交流を楽しんでいらっしゃいました。


4 第15回コンテストの開催に向けて

 中央酪農会議では、令和7年10月17日(一次審査は16日に非公開にて実施)に「第15回ALL JAPANナチュラルチーズコンテスト」を開催します。また、前回と同様に審査・表彰後には、展示試食会も行います。第14回において来場者に実施したアンケート結果では、特に展示試食会を高く評価いただいたことから、今回も国産ナチュラルチーズの試食体験を通じて、そのおいしさや実力とともに、全国各地の生産者のアイデアと工夫、努力によって豊富なバリエーションのチーズが提供されていることを実感していただけると思います。
 事前にお申し込みいただければ、どなたでも無料でご参加いただけます。ぜひご参加いただき、出品チーズの頂点が決まる瞬間を見届けていただくとともに、全国各地のさまざまな国産ナチュラルチーズを味わい、チーズ生産者との交流を楽しんでいただければと思います。そして、それらを通じて、チーズ生産者や酪農家への共感・応援、需要拡大につながることを願っています。
 
<第15回 ALL JAPAN ナチュラルチーズ
 コンテスト 開催概要>
■主催
一般社団法人中央酪農会議
■開催日
令和7年10月16日(木) 一次審査(非公開)
令和7年10月17日(金) 二次審査(非公開)、最終審査、表彰式、展示試食会 など
■会場
東京プリンスホテル
(東京都港区芝公園3丁目3番1号)
※詳細は、中央酪農会議ウェブサイトをご覧ください。
 
【プロフィール】
阿南 恵美香
一般社団法人中央酪農会議 業務部 調査役
 
平成16年 社団法人中央酪農会議入会、総務経理課
平成25年4月より業務部
現在は生乳の品質管理体制支援、生乳受託販売体制構築支援、国産チーズ競争力強化支援対策事業などを担当