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海外需給【牛肉/豪州】畜産の情報 2025年10月号

生産量、輸出量ともに過去最高を更新、生体価格も上昇

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25年8月若齢牛価格、900豪セント台に迫る
 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、7月以降上昇傾向で推移しており、直近8月28日時点では1キログラム当たり891豪セント(873円:1豪ドル=97.98円(注1))と、この1カ月で100セント以上上昇している(図1)。
  家畜市場における各指標を分析すると、主に農場の繁殖群に導入される雌牛を指す「補充用未経産牛指標」価格が7〜9月にかけて最も伸びており、牛群再構築に伴う繁殖用雌牛の需要増が背景にあるとみられる(図2)。現地報道でも、春の好天に期待する生産者たちが一斉に牛を買い付けているとされている。また、海外市場からの堅調な牛肉需要は継続しており、米国向けの加工用牛肉(90CL:赤身率90%のひき肉)は、8月第3週に1キログラム当たり11.08豪ドル(1086円)と7月に記録した最高値を更新している。
 
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年8月末TTS相場。
 







 
25年第2四半期、生産量が過去最高を記録
 豪州統計局(ABS)が2025年8月に公表した統計によると、25年第2四半期(4〜6月)の牛のと畜頭数は、四半期としては過去2番目の水準となる233万8200頭(前期比7.6%増)、牛肉生産量も同じく過去最高となる71万7891トン(同5.7%増)を記録した(図3)。堅調な輸出需要による牛肉加工のマージン拡大が記録更新に貢献した。雌牛と畜割合(FSR)は54.5%に上昇しており、引き続き雌牛の出荷が進んでいることを示している(図4)。他方で、前述の通り、これから春にかけて若い繁殖雌牛の導入が加速すると見込まれることから、27年以降とされていた牛群が増加局面に転じるタイミングは早まる可能性がある。





 
 
25年7月の牛肉輸出量は15万トン超え、記録更新が続く
 豪州農林水産省(DAFF)によると、2025年7月の牛肉輸出量は15万435トン(前年同月比15.7%増)とかなり大きく増加し、先月更新した単月での最高値を再び更新した(表)。現地報道によると、好調であった穀物肥育牛に加え、牧草肥育牛が大きく伸長したことが要因とされている。
 7月の輸出量を輸出先別に見ると、米国と中国向けが顕著に増加した。米国向けは4万3056トン(同11.7%増)とかなり大きく増加しており、米国内の牛肉供給不足と輸入牛肉価格の上昇にもかかわらず、引き続き旺盛な需要が背景にある。また、ブラジル産牛肉に対しては8月7日から50%の相互関税が課されていることから、豪州産牛肉の競争力はより高まっている状況にある。
 中国向けは3万925トン(同90.3%増)とほぼ倍増した。業界関係者は、市場アクセスの問題(注2)などにより米国産牛肉が中国市場から消失し、豪州産牛肉がほぼ単独で中国市場の需要に応えている状態と分析している。一方で、今後は同国へのブラジル産牛肉の流入が起こる可能性があることから、需要の変化には注視が必要としている。
 
(注2)詳細は『畜産の情報』2025年7月号「輸出需要を背景に若齢牛価格は今期最高値を記録、雌牛と畜割合は上昇」(https://www.alic.go.jp/joho-c/joho05_003783.html)をご参照ください。
 



 
(調査情報部 国際調査グループ)