25年9月若齢牛価格、22年以来の9豪ドル台に突入して安定して推移
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2025年9月第2週に22年以来となる1キログラム当たり901豪セント(900円:1豪ドル=99.89円(注1))を記録し、直近9月30日時点では同878豪セント(877円)と安定した推移を見せている(図1)。これについて現地アナリストによると、気象条件の改善により、南部地域(主にビクトリア州、南オーストラリア州)の牧草肥育農家の若齢牛導入意欲が高まっていることが要因とされている。一方、今後の見通しについては、北部地域(主にクイーンズランド州)における乾季(4〜11月)終盤の集牧による選別工程(注2)を経て、家畜市場への季節的な供給増が見込まれることから、価格上昇は落ち着くと分析されている。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年9月末TTS相場。
(注2)熱帯性気候地域で雨季と乾季が明確に分かれる豪州北部で見られる牛群管理の手法。通年放牧している牛群を雨季が始まる前に集め、市場や加工施設へ出荷する牛や保留する牛を選別する。雨季に入ると子牛の出産が増えること、悪天候により家畜の移動に制限がかかることが多いことから、このタイミングで選別が行われる。
成牛と畜頭数は安定して推移、年間牛肉生産量は過去最高と予測
2025年9月の週間成牛と畜頭数は、同月第3週時点で15万1320頭(前年同期比7.9%増)と安定して推移している(図2)。MLAが9月に公表した最新予測によると、25年のと畜頭数は902万頭(前年比8.6%増)、牛肉生産量は過去最高の279万トン(同8.7%増)を記録する見通しとされている。一方、堅調なと畜頭数および高い雌牛と畜割合(FSR)にもかかわらず、25年6月30日時点の牛群飼養頭数は3100万頭(前年同日比0.2%減)と、前年並みにとどまっていると予測されている。この要因として、1)ここ5〜10年における牛群の遺伝的能力の向上、2)牧草地の改善、3)フィードロット産業の収容能力上昇に伴う牛の肥育施設または若齢牛市場への出荷月齢の早期化−などにより農場の回転率が高まり、有用な後継雌牛の確保が円滑に進んでいることが背景にあると分析されている。
25年8月の牛肉輸出量、中国向けの伸びなどで前年同月比11.3%増
豪州農林水産省(DAFF)によると、2025年8月の牛肉輸出量は13万5570トン(前年同月比11.3%増)とかなり大きく増加し、月間記録としては7月の15万435トンに次ぐ過去2番目の水準となった(表)。MLAによると、特に穀物肥育牛肉の需要が伸びたとされ、8月の穀物肥育牛肉の輸出量は過去3番目の水準となる3万8284トン(同16.2%増)を記録している。
8月の輸出量を輸出先別に見ると、米国向けは4万754トン(同0.6%減)とわずかに減少したものの、輸出量全体の約3割を占める旺盛な需要は継続している。
中国向けは2万2323トン(同47.4%増)と大幅な増加が続いている。MLAによると、7月24日からの中豪FTAに基づくセーフガード発動(注3)以降、12%の関税が課されているものの、米国産の代替として豪州産穀物肥育牛肉の需要は堅調を維持しているとされている。一方、中国商務部が実施している輸入牛肉のセーフガード措置に関する調査(注4)については警戒感を強めており、11月26日の期限が迫る中、豪州産牛肉の輸入の継続について積極的に働きかけていく必要があるとしている。
また、韓国向けは2万1495トン(同21.6%増)と月間記録を更新した。この要因としては、韓国国内の低調な牛と畜頭数および豪州産牛肉のブランド認知度の向上に加え、9月12日に発動した韓豪FTAに基づくセーフガードを見越した駆け込み需要によるものとみられている。9月12日以降は関税率が24%となり、米国産牛肉などとの価格競争面で不利な状況となることから、今後の輸出量への影響が懸念されている。
(調査情報部 国際調査グループ)