動物検疫所が強化している携帯品・国際郵便物による家畜伝染病の侵入防止の対策は、(1)相手国から持ち出させない対策、(2)わが国に入れさせない対策−に大別される(図6)
(1)相手国から持ち出させない対策
家畜伝染病の侵入防止には、わが国へ輸入できない畜産物の持ち込みを、輸出される前に未然に防ぐことが最も有効であることから、動物検疫所は海外への事前対応型広報を戦略的に展開している。具体的には、中国やベトナムなど違法持ち込みが多い国を対象に、1)ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS) や海外メディア向けのニュースリリースでの情報発信、2)多言語動画による動物検疫制度の配信、3)航空会社に依頼して現地の空港カウンターでのポスターやリーフレットの掲示と機内アナウンスによる注意喚起−などを行っている。
(2)わが国に入れさせない対策
動物検疫所では、ASFの発生地域など疾病の侵入リスクの高い国からの便に対して、1)令和2年に一部改正された家畜伝染病予防法により家畜防疫官(注)に新たに権限が付与された出入国者に対する口頭質問、2)同年に140頭体制に拡充された動植物検疫探知犬(以下「探知犬」という)を活用した携帯品検査の重点実施、3)畜産物の違法な持込みに対する対応の厳格化(違反者情報のデータベース化、警告書の交付、警察への通報や告発)、4)国際郵便物の検査強化−などを行っている(写真)。
探知犬は、主要な国際空港に加え、全国の地方空港やクルーズ船ターミナル、国際郵便を取り扱う郵便局でも探知活動を行っている。探知犬を契機とした輸入禁止品などの摘発件数は多く、探知犬は水際検疫の頼もしいパートナーとして欠かせない存在となっている。また、探知犬は、多くのメディアに取り上げられるなど注目度が高く、広報活動にも大きく貢献している。
(注)家畜伝染病予防法に基づき、獣医師または家畜の伝染性疾病に関し学識経験のある者のうち農林水産大臣に任命された者。