令和6年度の食料自給率、前年度並みの38%
農林水産省は令和7年10月10日、「令和6年度食料需給表(概算)」(注1)および「令和6年度食料自給率について」を公表した。
食料自給率とは、日本国内に供給されたすべての食料(以下「国内仕向量」という)に対する国内で生産された食料の割合を示す指標であり、供給熱量(カロリー)ベースおよび生産額ベースで計算する総合食料自給率と、重量ベースの品目別自給率の2種類がある。
総合食料自給率のうち、基礎的な栄養価であるエネルギー(カロリー)に着目した供給熱量ベースの総合食料自給率を見ると、6年度は、主食用米の消費量が増加したこと、国産てん菜・さとうきびの生産量の増加により産糖量が増加したことがプラス要因となった一方で、小麦の単収減少により生産量が減少、大豆、野菜、魚介類の生産量も減少したことがマイナス要因となり、38%と前年度並みとなった(表)。また、供給熱量ベースの食料国産率(注2)も、47%と前年度並みとなった。
経済的価値に着目して、国民に供給される食料の生産額に占める国内生産の割合を示す指標としては、生産額ベースの総合食料自給率がある。これを見ると、特に、米、野菜、畜産物の国内価格上昇に伴い、国内生産額が増加したことなどにより、64%と前年度から3ポイント上昇した。また、生産額ベースの食料国産率についても、69%と前年度から2ポイント上昇した。
一方の品目別自給率は、各品目における自給率を重量ベースで算出したものである。分子を国内生産量、分母を国内消費仕向量(注3)として計算したものであり、各要素の増減が同自給率の増減に反映される構成となっている。
このうち、肉類(鯨肉を除く。以下同じ)は、前年度並みの53%となった。また、肉類全体の国民1人・1年当たり供給純食料(注4)は、34.3キログラムと前年度から0.4キログラム増加した。
なお、畜種によって異なるものの、畜産全体で見ると、家畜に給与する飼料のうち、20%は主に国産品が占める粗飼料、80%は主に輸入品が占める濃厚飼料となっている(可消化養分総量(注5)(TDN)換算ベース)。飼料自給率(TDN換算ベース)については、26%と前年度から1ポイント減少した。このうち、粗飼料自給率は80%、濃厚飼料自給率は13%と、いずれも前年度並みとなった。また、飼料自給率を考慮した肉類の品目別自給率については、飼料用穀物の多くを海外から輸入していることから低い水準にあり、前年度並みの8%となった。
(注1)「食料需給表」とは、1年間に国内で供給される食料の生産から最終消費に至るまでの総量を明らかにするとともに、国民1人当たりの供給純食料および栄養量を示したものであり、食料自給率の算出の基礎となるものである。計測期間は、牛肉、豚肉、牛乳・乳製品、鶏卵については、当年4月1日から翌年3月31日まで、鶏肉については、平成21年度以降、暦年(当年1月1日から12月31日まで)となっている。
(注2)飼料が国産か輸入かにかかわらず、畜産業の活動を反映し、国内生産の状況を評価する指標である。総合食料自給率が飼料自給率(畜産物に仕向けられる飼料が、国内でどの程度賄われているかを示す指標)を反映しているのに対し、食料国産率では飼料自給率を反映せずに算出している。
(注3)1年間で国内市場に出回った食料の量を表す数。国内消費仕向量=国内生産量+輸入量−輸出量±在庫増減量によって算出される。
(注4)各品目の1年間に国内で消費に回された食料のうち、食用向けの量を表す「粗食料」を人間の消費に直接利用可能な形態に換算した量を日本の総人口(各年度10月1日現在)で除したもの。なお、令和6年10月1日現在の人口は、1億2380万2000人(前年度比0.4%減)。
(注5)エネルギー含量を示す単位であり、飼料の実量とは異なる。
以下、食肉(牛肉、豚肉、鶏肉)、牛乳・乳製品、鶏卵の品目別自給率(重量ベース)、国民1人・1年当たりの供給純食料について紹介する。
1 牛 肉
令和6年度の牛肉自給率、前年度から2ポイント上昇の42%
令和6年度の牛肉自給率は、42%と前年度を2ポイント上回り、5年連続の上昇となった(図1)。
国内生産量(枝肉換算)については、平成29年度以降、畜産クラスター事業などの取り組みにより和牛を中心におおむね増加傾向となっている。令和6年度は、乳用種および交雑種が減少した一方、和牛が増加し、全体では50万5000トン(前年度比0.6%増)と前年度をわずかに上回った。
輸入量については、近年、増加傾向で推移していたが、2年度以降は新型コロナウイルス感染症(COVID−19)の影響による外食需要の低迷や為替の円安傾向などから減少傾向にあった。6年度においては、現地相場高などにより米国からの輸入量が減少したものの、豪州のうち主に加工用のひき材などに使用されるトリミングの輸入量が増加したことなどにより、72万4000トン(同1.0%増)と前年度をわずかに上回り、5年ぶりの上昇となった。
その他、輸出量については、特に米国向けが大幅に増加し、1万5000トン(同25.0%増)と前年度を大幅に上回り、国内在庫については、1万1000トンが積み増しとなった。
この結果、国内消費仕向量については、120万3000トン(同3.2%減)と前年度をやや下回り、5年連続の減少となった。
このため、国民1人・1年当たり供給純食料(精肉換算)については、5.9キログラム(同3.0%減)と前年度から0.2キログラム減少した。
なお、飼料自給率を考慮した自給率は、12%と前年度並みとなった。肉用牛に給与される飼料には、国産品で賄われる割合が高い粗飼料が含まれていることから、牛肉の同自給率は、主に濃厚飼料を給与される豚肉や鶏肉に比べて高い水準にある。
2 豚 肉
令和6年度の豚肉自給率、前年度から1ポイント低下の48%
令和6年度の豚肉自給率は、48%と前年度を1ポイント下回り、4年ぶりの低下となった(図2)。
国内生産量(枝肉換算)については、近年は疾病発生の影響などにより減少した時期はあったものの、畜産クラスター事業などの取り組みにより増加傾向で推移していた。しかし6年度は、出荷頭数の減少などから、127万8000トン(前年度比1.5%減)と前年度をわずかに下回った。
輸入量については、欧州やブラジルからの冷凍品の輸入量が増加したことなどにより、143万3000トン(同7.7%増)と前年度をかなりの程度上回った。
その他、輸出量については、堅調な需要があった香港およびシンガポールへの輸出が大幅に減少し、2000トン(同33.3%減)と前年度を大幅に下回り、国内在庫については、3万9000トンが積み増しとなった。
この結果、国内消費仕向量については、267万トン(同0.6%増)と前年度をわずかに上回った。
このため、国民1人・1年当たりの供給純食料(精肉換算)は、13.2キログラム(同0.9%増)と前年度から0.1キログラム増加した。
なお、豚は、輸入品の占める割合が高い濃厚飼料が主に給与されており、飼料自給率を考慮した自給率は、8年連続で6%となった。
3 鶏 肉
令和6年の鶏肉自給率、前年から1ポイント低下の64%
令和6年の鶏肉自給率は、64%と前年から1ポイント低下した(図3)。
国内生産量(骨付肉換算)については、消費者の健康志向の高まりや根強い国産志向を背景に増加傾向で推移しており、6年も堅調な需要から、171万1000トン(前年度比1.2%増)と13年連続で過去最高を更新した。
輸入量については、国内の在庫水準によって多少の増減はあるものの、近年、増加傾向で推移しており、6年は、国内の節約志向を背景とした鶏肉需要などから、98万6000トン(同7.9%増)と前年をかなりの程度上回った。
その他、輸出量については、日本国内での高病原性鳥インフルエンザ発生に伴う輸出先側の輸入停止の影響が見られたものの、香港やベトナムでの需要の拡大などから、5000トン(同25.0%増)と前年を大幅に上回った。国内在庫については、1万5000トンが積み増しとなった。
この結果、国内消費仕向量については、267万7000トン(同3.0%増)と前年をやや上回った。
このため、国民1人・1年当たりの供給純食料(正肉換算)は、14.9キログラム(同3.3%増)と前年から0.5キログラム増加した。
なお、鶏は、輸入品の占める割合が高い濃厚飼料が主に給与されており、飼料自給率を考慮した自給率は、8%と前年並みとなった。

4 牛乳・乳製品
令和6年度の牛乳・乳製品自給率、前年と同水準の63%
令和6年度の牛乳・乳製品の自給率(以下断りのない限り生乳換算ベース)は、前年度と同じく63%となった(図4)。飼料自給率を考慮した自給率についても、前年度と同じく29%となった。
国内生産量(生乳生産量)は、737万3000トン(前年度比0.7%増)と3年ぶりの増加となった。用途別の内訳を見ると、飲用向けが382万1000トン(同0.5%減)と前年度を下回った一方、乳製品向けは350万7000トン(同2.0%増)と前年度を上回った。
輸入量は、442万1000トン(同3.3%増)と前年度からやや増加し、チーズや飼料用脱脂粉乳などの増加により5年ぶりの増加となった。輸出量は、脱脂粉乳の減少などにより6万3000トン(同7.4%減)とかなりの程度減少した。また、需要量を示す国内消費仕向量は、1165万7000トン(同0.4%減)と前年度をわずかに下回った。
チーズの国内消費仕向量は、4年度以降の商品の値上げや物価高騰による買い控えによる減少が一服したこと、輸入量が5年ぶりに増加したことなどから、30万4000トン(同3.1%増、製品重量ベース)と5年ぶりの増加となった。
牛乳・乳製品の国民1人・1年当たり供給純食料は、90.7キログラム(同0.6%増)と前年度からわずかに増加した。

5 鶏 卵
令和6年度の鶏卵自給率、前年度から1ポイント上昇の97%
令和6年度の鶏卵自給率は、97%と前年度から1ポイント上昇し、畜産物の中で最も高い水準を維持した(図5)。
国内生産量(殻付換算)については、2年度以降、COVID−19の影響による価格低下やHPAIの記録的な発生の影響などにより減少傾向で推移していたが、6年度は、244万4000トン(前年度比0.0%増)と前年度並みとなった。
輸入量については、加工原料用の粉卵が約9割を占めているが、ひっ迫していた国内の需給が年度前半に緩和したことなどから、9万8000トン(同11.7%減)と前年度をかなり大きく下回った。
その他、輸出量については、約98%は香港向けであり、香港向けの輸出量が大幅に増加したことなどから、2万2000トン(同10.0%増)と前年度をかなりの程度上回り、国内在庫については、増減はなかった。
この結果、国内消費仕向量については、252万トン(同0.6%減)と前年度をわずかに下回った。
このため、国民1人・1年当たり供給純食料(付着卵白および殻を除く)は、16.2キログラム(同0.3%減)と前年度から0.1キログラム減少した。
なお、鶏は、輸入品の占める割合が高い濃厚飼料が主に給与されており、飼料自給率を考慮した自給率は、12%と前年度から1ポイント低下した。
(食肉、鶏卵:畜産振興部 山下 侑真)
(牛乳・乳製品:酪農乳業部 田中 麻紀)