25年10月若齢牛価格は下落傾向も、降雨により復調の見通し
豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、肉牛生体取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2025年9月上旬以降緩やかな下降傾向が続いており、直近同年10月29日時点では、1キログラム当たり825豪セント(850円:1豪ドル=103.07円(注))となった(図1)。現地報道によると、ニューサウスウェールズ(NSW)州南部およびビクトリア(VIC)州での降雨量の減少により、牧草の確保が困難と判断した生産者による出荷の増加が価格下落の一因とされている。
一方、豪州東部地域における10月27日の週の豪雨で、EYCI価格の下落は落ち着きを見せている。また、今後の見通しについて、現地アナリストによると、豪州気象局(BOM)の予報で25年11月から26年1月にかけ、主要肉用牛生産地域であるクイーンズランド(QLD)州、NSW州での平年以上の降雨があり、牧草の生育環境の改善が見込まれることから、家畜の早期出荷の動きは落ち着き、価格も安定すると分析している(図2)。
(注)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年10月末TTS相場。
成牛と畜頭数は本年2番目の記録、海外需要の高まりを反映
2025年10月の週間成牛と畜頭数は、祝日による人員不足の影響で一時的な減少があったものの、10月第4週は15万8551頭(前年同期比9.1%増)と今年2番目の水準を記録した(図3)。特にQLD州は今年最大のと畜頭数となる8万4290頭を記録し、全体の53.2%を占めた。
現地報道によると、豪州最大の食肉加工業者であるJBSオーストラリアは、同社ディンモア牛肉処理施設(QLD州)において、約200人の人員を調達し、10月から週当たりと畜頭数を1600頭増加させるなど処理頭数の拡大を図ったと報じられている。同社の関係者によると、今回の処理頭数の拡大は、海外需要の高まりと国内供給量に連動した事業拡大を目指す同社の姿勢を反映したものと述べている。
25年9月の牛肉輸出量、日本向けが前年同月比33.1%増加
豪州農林水産省(DAFF)によると、2025年9月の牛肉輸出量は13万9012トン(前年同月比21.9%増)と大幅に増加し、7月の15万435トンに次ぐ過去2番目の水準となった(表)。また、第3四半期の牛肉輸出量は42万5018トン(前年同期比16.2%増)と、四半期ベースで過去最高を記録した。
9月の輸出量を輸出先別に見ると、米国向けは4万1918トン(前年同月比12.6%増)と引き続き豪州の牛肉輸出をけん引した。米国向け加工用牛肉(90CL:赤身率90%のひき肉)は、10月第4週に1ポンド当たり3.46米ドル(1キログラムあたり1181円:1米ドル=155.10円)と過去最高水準に達し、需要の高さを裏付けている。
また、中国向けは2万741トン(同28.3%増)と引き続き堅調で、セーフガードの影響が懸念されていた韓国向けも、2万1247トン(同34.1%増)と安定した水準を維持している。
加えて、前年を下回る水準が続いていた日本向けは2万2759トン(同33.1%増)と大幅に増加し、増加基調に転じている。現地報道によると、日本の輸入牛肉市場では豪州産が米国産との価格競争で優位となったとされている。一方、現地アナリストによると、年末にかけて米国では乳牛淘汰率が上昇し、牛肉生産量が増加することで牛肉価格が下落すると分析しており、日本市場での競争環境はさらに変化する可能性がある。
これら主要市場に加え、その他の輸出先市場も増加しており、特にカナダ向けは5745トン(同80.3%増)と大幅に増加した。カナダ最大の牛肉輸入先は米国であり、米国の牛肉輸出量減少により、世界市場における豪州産牛肉の存在感は高まりを見せている。
(調査情報部 国際調査グループ)